第53話 平和主義者-1

これまでのあらすじ
 1685年、フランスの絶対君主ルイ十四世は、信教の自由を定めたナントの勅令を廃止し、カトリック以外の宗教を禁じた。迫害に耐えかねたユグノーによって「カミザールの乱」が引き起こされ、南フランスのセヴェンヌは2年にわたり反乱軍の影響下にあった。しかし、カミザールは1704年に大敗北を喫し、さらに裏切り者のために食料庫と武器庫が被害を受け、勇猛な武人マクシミリアンは戦死した。
 一方、宮廷は新たにヴィラール元帥をセヴェンヌに派遣した。

 ナージュからウーゼに向かったカミザールの部隊は、途中でまた一人また一人と敗残兵を発見し、千人のうち六百人までが合流できた。しかし、やっとの思いでウーゼにたどり着いた彼らを出迎えたのは、まずもって空を睨んだまま倒れていたマクシミリアンであった。
「マクシミリアン!」
 ロランが駆け寄って揺さぶってみたが、すでにその身体は固く冷たくなっていた。
「お前が…死ぬなんて…。」
 ロランはマクシミリアンの身体を抱いてむせび泣いたが、この忠実にして勇敢な武人の死はウーゼの荒廃の手始めに過ぎなかった。
 洞窟の物資は全て持ち去られ、療養中であった病人たちはみな殺されていた。どの顔も苦痛と無念の表情で固まっていた。
「ひどい…。」
 休息と癒しを求めてたどり着いた場所は地獄であった。誰も彼もが意気消沈し、その場にへたへたと座り込んだ。そんな中、二人だけは自分の妻の名前を呼びながらウーゼのあちこちを探し回った。
「マルトはどこだ?」
「カトリーヌ!」
 もしやどこかに隠れているのではないかと願いながら、二人は森の中から洞窟の奥までさんざん探し回った。メレは痛む足を引きずりつつ木の枝を杖代わりにしていた。しかし、そうした努力は徒労に終わっただけであった。
 この二人までもが疲労困憊して座り込んだその時、それまで座り込んでいたアルが立ち上がった。
『こんな時…、こんな時ディマンシュならどうする? なすすべもなく呆然としているだけか? そうだ。まず、やるべきことがあるじゃないか…。』

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