第50話 情欲の報い-1

これまでのあらすじ
 1685年、フランスの絶対君主ルイ十四世は、信教の自由を定めたナントの勅令を廃止し、カトリック以外の宗教を禁じた。これまで共存していたユグノー(カルヴァン派のプロテスタント)とカトリックの人々との間には、深い対立が生じることになった。
 1702年7月、シェーラ司祭の暴虐をきっかけに、これまで押さえつけられていたユグノーの不満が爆発した。自然発生的な抵抗の中で指導的役割を果たした人物が次々と殺害されていったが、ユグノーたちは若いジャン・カヴァリエを中心に「カミザール」という部隊に結集していった。

 サルガ男爵の逮捕も裁判も秘密裏におこなわれたたために、カミザールとしては彼の行方をつきとめる術はなかった。しかも、知事へのご機嫌伺いのためにモンペリエに行ったのが彼の最後の消息であったために、彼が秘かに知事側に寝返ったのではないかという疑念を表明する者もいた。
「とんでもねえ!」
 そうした考えに激しく反発したのはカスタネであった。
「男爵を連れてきたのはこのおれだ。男爵を信用しねえってことは、このおれをも信用しねえってことになるぜ!」
 サラもカスタネの意見に同意した。
「そうよ、そうよ。寝返るような人ならあれほど熱心にあたしたちに銃の撃ち方を教えてくれたりはしないわ。」
 サラはサルガ男爵に銃の腕前についていつもほめられていた。平民の女に対しても分け隔てなく高い評価を与えるサルガ男爵の態度に彼女は絶大な信頼を寄せていた。
 しかし、ディマンシュは深刻な顔で言った。 
「だが、彼の身に何かが起こったのは事実だ。最悪の事態を覚悟しなければならないかもしれない。」
 ロランは彼の意見を遮って言った。
「これまで何人もの仲間が戦場で、あるいは刑場で命を落としてきた。サルガ男爵もそこは覚悟しているはずだ。」
「最悪の事態というのはそういうことではない。彼が逮捕されたとすれば、厳しい拷問に耐えかねて仲間の名前や様々な隠れ家の場所をしゃべってしまうかもしれないということだ。」
「男爵はたしかにおれを助けてくれた頃は軟弱なところはあった。しかし、カスタネと会ってからは、完全に変わった。」
 議論はいつものようにジャン・カヴァリエによってまとめられた。
「猜疑心はわれわれの敵だ。男爵を信じ、迫害にあっているなら彼の無事をみんなで祈ろう。しかし、男爵の不在の間、彼の代わりをする者が必要だ。」
 こうしてロランが山麓地帯の責任者に復帰し、さらにアレクサンドルが銃の訓練の指導に加わることになった。

 議論を終えた後、サラはそそくさとマゼルと暮らしている家へと戻った。家をきれいに掃除し、衣服に湯のしをかけた。

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