第48話 約束-1

これまでのあらすじ
 1685年のナントの勅令の廃止でフランスのユグノーは信仰の自由を失い迫害に耐え忍んでいた。1702年7月、ついにそれに耐えきれなくなった人々がセヴェンヌで反乱を起こした。彼らは「カミザール」と名乗りその勢力を拡大していった。その鎮圧の任に当たったブログリ伯爵は役目を全うできずに解任され、新しくその任に付いたモントルヴェル元帥は非武装の女性や子どもにも容赦なく殺戮をおこなった。しかしそれでもカミザールの勢力はいっこうに衰えを見せなかった。

 復活祭の翌日、シャルロットとの約束通りにリヴェール神父はモンペリエへと向かった。途中、アレスを通った時、威圧的な雰囲気を漂わせた何の飾りもない煉瓦色の四角い建物が目に付いた。捕虜収容所であった。その建物のどこかしらからのかすかな声を聞いて、彼はこの収容所に立ち寄ってみようという気になった。
「神父の視察? なんだってこんなところに?」
 門番の兵士の取り次ぎに、収容所の所長は面倒くさそうに答えた。
「はっ、なんでも悔い改める者がいればそれを導くのが聖職者の役目だとおっしゃっているのですが…。」
「ふん、あの連中が悔い改めるわけがなかろう。さっさと裁判を済ませてガレー船送りにしてしまえばいいのだ。裁判が遅いから収容所はもう満杯だ。」
「で、どういたします。」
「まあ、聖職者には敬意を払わねばならぬからな。お通ししろ。」
 収容所の所長は大柄でいかつい顔の男であった。それに比べてリヴェール神父は、背はさほど高くなくやや痩身で、顔立ちは聖職者らしい穏やかさをたたえていた。ただ目つきだけは異様に鋭かった。
 所長が神父と対面した時、彼は思わず畏怖を感じて驚きの声を上げた。
「リ、リヴェール殿!」
 リヴェールはほとんど表情を変えずに言った。
「カユザック君か。こんなところで出会うとは思わなかった。」

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