第47話 枝の日曜日-1

 これまでのあらすじ
 1702年にセヴェンヌで信教の自由の回復を求めて反乱を起こしたカミザールはセヴェンヌで地歩を拡大し、ユグノーの住民は彼らに協力を惜しまなかった。国王軍を率いるモントルヴェル元帥はカミザールを鎮圧しようと様々な手段を使っていたが、復活祭を前にして一計を案じていた。

 一七〇三年の復活祭は四月八日で、その一週間前が、「枝の日曜日」あるいは「棕櫚(しゅろ)の日曜日」と呼ばれる日に当たる。これはロバに乗ってエルサレムに入城するイエスを人々が棕櫚の枝を振って歓迎したことを記念する日である。
 イエスはパレスチナ各地で病人を治療しながら弟子や信奉者を集めていった。しかし、ファリサイ派はイエスが「安息日は人のために定められた。人が安息日のためにあるのではない」と言いながら安息日にも病人を治すことをもって、彼が神を冒涜していると考えるようになった。イエスがエルサレムに入城した時、民衆のイエスへの期待は高く、ユダヤ人が長らく待ち望んだ救い主がついに現れたのだという期待に満ちて迎えられた。しかし、イエスの受難はその時から始まる。イエスの弟子たちの中に彼を裏切る者が現れたのであった。

 モントルヴェル元帥がユグノーの女たちを裏切り者に仕立てるやり方は簡単であった。彼は罰金や強制移住などの懲罰を加えたユグノーの村から適当な娘を選び出し、言うとおりにしないと彼女らの父や兄弟をガレー船送りにすると脅した。
「本当なら罰金を払うだけでは済まされぬ。特におまえの父親の罪が重い。ガレー船送りだ。夏は砂漠のように熱く、冬は氷のように冷たい船の中で死ぬまで船を漕いでもらうことになる。さて、何年生きられるかな…。」
 震え上がる娘に元帥は猫なで声で付け加えた。
「しかし、おまえの働き如何では、罰金を支払うだけで免除してやろう。何、簡単なことだ。カミザールの仲間になって秘密の集会がいつどこでおこなわれているのかを告げてくれればそれでいい。たったそれだけのことだ。彼らがどこで何をしているのか知っておきたいだけなのだ。それをこちらに知らせた後も素知らぬ顔で集会に参加しておいてくれたらそれでいい。いつもと違う態度を取るとかえって疑われるからな。」
 これに応じなかった娘は遠く離れた修道院に閉じこめ、応じた娘には金を与えて解き放った。

 一七〇三年四月一日の枝の日曜日、セヴェンヌではいくつもの場所で“女たちの祈りの会”がおこなわれた。老人や幼い子どもも行けるよう、険阻な山奥ではなく比較的便利なところにある水車小屋や家畜小屋や倉庫などがその場所に選ばれた。
 この日ガブリエルはかねてからの打ち合わせ通り、山腹の村はずれにある彼女の家からアレスの方に降りていく途中にある水車小屋へと向かった。その途中で彼女は不審な気配を感じた。後ろからひたひたと足音が聞こえてくる。立ち止まるとその足音も止まり、歩き出すとまた聞こえてくる。明らかに誰かに後を付けられている。彼女は曲がりくねった道にさしかかると、さっと茂みの中に身を隠した。

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