第45話 悪夢-1

これまでのあらすじ
 1702年にセヴェンヌで信教の自由の回復を求めて反乱を起こしたユグノーは「カミザール」と名乗るようになり、セヴェンヌで地歩を拡大していった。
 しかし、カミザールの一員マゼルはリヴェール神父との出会いによって精神的に混乱をきたして引きこもり、カミザールの部隊の中ではしかや天然痘が流行りロランやジャン・カヴァリエが病に倒れた。
 その一方、国王軍率いるブログリ伯爵は出世病にとりつかれ、無謀な作戦でかえって大敗北を喫し、有能な軍人プール隊長は戦死した。プール隊長の副官を務めていたアドルフは重傷を負うが、とある村の女性に助けられる。
 ブログリ解任後に新しく赴任したモントルヴェル元帥はポンピニャンの戦闘でカミザールに大きな打撃を与える。
 ロランを失ったカミザールの部隊はマゼルを復帰させようと説得にディマンシュを派遣するが、彼もまた調子を崩して戻ってきた。

 
 ディマンシュの変調をもたらした原因はマゼルにあった。しかし、マゼルは再度訪ねてきたディマンシュにとてつもない乱暴を働いたわけでもひどい悪態をついたわけでもなかった。ただ彼は一枚の紙を見せただけであった。
 ディマンシュはマゼルの小屋を訪ねると前置きもなく言った。
「時間がない。率直に本題に入ろう。実はロランが死んだ。」
「なんだって!」
「それでぜひ君に我々の部隊に戻ってきてほしいんだ。」
「ロランが…? 死んだ…? 嘘だろ!」
「我々も嘘だと思いたい。しかし、ポンピニャンで罠にかかり、ロランだけでなく三百人以上が無惨な死を遂げたんだ。」
「なんてことだ…。」
「ロランはこの山麓地帯を担当していた。彼に代わってこの地域の指揮を執れるものは君しかいない。」
「おれしかいない?」
「そうだ。君の力が必要なんだ。」
 マゼルはしばらくじっと黙っていた。ロランの死は彼にとっても衝撃的であり、そして仲間が自分を必要としてくれるのは正直言ってうれしかった。しかし、マゼルにはやはり神の声は聞こえないままであった。

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