第39話 炎-1

これまでのあらすじ
 1685年以来信教の自由を奪われていたフランスのユグノーは、1702年7月24日ポン・ド・モンヴェールにおいて迫害者の一人シェーラ司祭の館を襲撃し、囚われていた者たちを救い出すことで、反撃を開始した。しかし、それはユグノーたち自身にとっても先の見通しのないまま義憤に駆られておこなった行為であった。
 ジュネーヴから帰ってきたディマンシュは、アルや仲間たちと相談して用意周到な準備をした上で叛乱を起こそうと考えていたが、事態は彼の想定を超えて進んでいた。アルは妻のシャルロットを父親の手に奪い返されて精神的に打撃を受けており、叛乱はすでに突発的な形で始まっていた。

 ポン・ド・モンヴェールを襲撃した者たちは、シェーラ司祭の死を確認すると、達成感と開放感に沸き立った。恐怖は消え、安心と喜びとが支配した。囚われていた全ての者たちは、解放者たちと共に夜通し詩編歌を歌い、祈りをささげた。
 この町に実家のあるランポン兄弟は、母親と妹のシモーヌを安心させようとしてこの喜びを伝えた。
「母さん、シモーヌ、おれたちはやったぞ!」
 夜中の突然の来訪者に最初は驚いた母親であったが、すぐに息子たちであるとわかった。
「おお、ジャン、アントワーヌ、いったい何をやったと言うのかい?」
「あの魔術師をとうとうやっつけたんだ。」
 弟のアントワーヌ・ランポンが喜びを抑えきれないという調子で言った。シモーヌは半信半疑で尋ねた。
「魔術師って…、もしかしてあのシェーラ司祭のこと?」
「そうだ、あいつは不死身なんかじゃなかったんだ。おれたちをだまくらかしていただけだったんだ。」
 兄のジャン・ランポンが説明した。
「嘘だと思ったらメゾン・アンドレまで来てくれ。」
「兄さん、嘘だなんて思わないけど行ってみるわ。あの司祭にはあたしたちがどれほどひどい目に遭ってきたか…。」
 真夜中ではあったが、詩編歌を大声で歌う行進が町を通ってから、何ごとが起こったのかと通りに出て見る者が何人もいた。シモーヌと母親は、かねてからシェーラ司祭のやり方に不満を抱いていたユグノーに出会うたびにこの事件を伝えた。人々の口から口へとこの事件の有様が伝えられた。その話を聞いて大勢の者たちがメゾン・アンドレに集まり、歌と踊りに参加した。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック