第35話 召命-1

これまでのあらすじ
 1685年、フランスの絶対君主ルイ十四世は、信教の自由を定めたナントの勅令を廃止し、カトリック以外の宗教を禁じた。これまで共存していたユグノー(カルヴァン派のプロテスタント)とカトリックの人々との間には、深い対立が生じることになった。多くのユグノーがフランスから亡命し、あるいはカトリックに改宗していったが、南フランスのセヴェンヌには、心の底から改宗したのではない人々が数多く存在していた。

 セヴェンヌのユグノーたちはジュネーヴから説教者としてポワーヴルを呼び寄せた。彼の説教と活動はユグノーを精神的に励ますものであったが、あくまでもそのような存在を認めないシェーラ司祭らの手によって、彼もまた刑場の露と消えた。

 ポワーヴルの刑死はジャン・マシップによってジュネーヴに伝えられた。ジュネーヴではこれを受けて、次の説教者を送るべきかどうかという議論がなされたが、消極論が主流を占め、結局のところ、セヴェンヌからの新たな要請があるまでは積極的には動かないという結論になった。
「それにしても、カルヴァン師が故郷フランスのこのようなありさまを御覧になられたら、さぞやお嘆きのことであろう。」
「これほどまでの先人の労苦が灰燼に帰すとは…。」
 会議に参加して発言できるのは、聖職者の中では牧師や教師、それから非聖職者の中からあらかじめ選ばれた長老たちだけであった。しかし、その場にいたのはそれらの人々だけではなく、会議の参加者に奉仕するために当番に当たっているジュネーヴ学院の学生たちもいた。
 その奉仕の学生のひとりが飲み物を運びながら、先ほどの言葉に異議を唱えた。
「私はそうは思いません。」
「ブライユ君、さしでがましいぞ。」
 黒髭のレフォール師が彼の言葉を押さえた。しかし、セルリ師はもっと寛容に振る舞った。
「まあいいではないか。彼の言い分を聞こう。」

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この記事へのコメント

2008年12月01日 01:51
1年以上も出番の無かった主人公。ようやく出てきたか。
2008年12月01日 18:30
読み返したら30話で出てましたね。ポワーブルの印象が強すぎて忘れてました(汗)。
沢里尊
2008年12月01日 20:19
ついに登場。嵐を呼ぶ男。古い? 嵐を呼ぶ園児・・・それはシンちゃん。
民衆に陽気な日曜日を運ぶ男・・・ディマンシュ!
往くか。危険地帯へ!
あえて茨の道を。いや、命懸けの悪路を・・・。
2008年12月02日 00:12
アッキーさん、そうなんです。第三部でもちゃんと登場しているのです。ただし、ジュネーヴのその場面以外には、手紙でのやりとりだけで、ずいぶん影が薄かったのはその通りです。これから濃くなっていくのかな?
2008年12月02日 00:18
沢里さん、彼の再登場をとても素敵な言葉で飾っていただき、ありがとうございます。“陰気な日曜日”と題名を変えたらどうかと言われそうな展開が続いていますが、すばらしい解題をしていただきました。

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