第29話 最強の門番-1

これまでのあらすじ
 1685年、フランスの絶対君主ルイ十四世は、信教の自由を定めたナントの勅令を廃止し、カトリック以外の宗教を禁じた。これまで共存していたユグノー(カルヴァン派のプロテスタント)とカトリックの人々との間には、深い対立が生じることになった。多くのユグノーがフランスから亡命し、あるいはカトリックに改宗していったが、南フランスのセヴェンヌには、心の底から改宗したのではない人々が数多く存在していた。
 そのような人々の中で、鍛冶屋のラポルトらを中心として、ジュネーヴから説教者を招請しようという運動が秘密裏に進められていた。
 ユグノーの青年ロランとマゼルはラポルトの考えに賛同し、そのための資金集めに勤しんでいたが、その手法が強引に過ぎたことでラポルトに叱責される。そして誤解させてしまったジャン・カヴァリエと和解するまでは、活動の停止を命ぜられた。
 マゼルは、ラコンブの農場で知り合ったアルの力を借りてジャンとの和解を果たすが、一方、ロランは行方不明になっていた。ところが、アンデューズの広場で、ジャンが厳めしい男に縛られているロランを発見する。

 ロランがどうしてアンデューズの広場でみじめな姿をさらすはめになったのか。その説明をするためには、その前日のロランが家を出て行くところから語らねばならない。
 ロランは父親が自分を叱ったのは当然だと思っていた。自分でも仕事が全くはかどっていないのがわかっており、それではいけないと思っていたのだった。父親から怒鳴りつけられたことで、ロランは一時の心の平安を得ることができた。その衝撃は、頭の中に浮かび上がってくる娘の嫌悪のまなざしを消し去ってくれたのである。それでロランは心から安心して、明日からは真面目に仕事をすると誓ったのであった。
 しかし、その平安は続かなかった。一人になるとまた同じ映像が頭の中に浮かんできた。そして彼を再び苛(さいな)み始めた。ロランはもうどうしていいかわからなかった。とにかく、また仕事を怠けていると思われないよう、ひそかに家を抜け出した。それから、どこをどう歩いたのか、ロラン自身にもわからなかった。気がつくと、アンデューズの町にまでやって来ていたのだった。
「おれはどうして、こんなところにいるんだ…? そうだ…。この町で、あの娘に会ったんだっけな。」
 ロランはむしょうにあの娘に会いたくなってきた。あの娘に会って誤解を解くことこそ、この悲痛な思いから逃れられる唯一の道に違いないと思い込んだ。
『あの時おれはけっして弱いものいじめをしてたんじゃねえ。せめて、それをわかってもらえたら…。』
 しかし、名前も住んでいるところも知らない娘とどうすれば再会できるのだろうか。

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