第25話 若者たち-1

これまでのあらすじ
 1685年、フランスの絶対君主ルイ十四世は、信教の自由を定めたナントの勅令を廃止し、カトリック以外の宗教を禁じた。これまで共存していたユグノー(カルヴァン派のプロテスタント)とカトリックの人々との間には、深い対立が生じることになった。多くのユグノーがフランスから亡命し、あるいはカトリックに改宗していったが、南フランスのセヴェンヌには、心の底から改宗したのではない人々が数多く存在していた。
 ボルドーの出身のユグノーの青年ディマンシュは、弾圧されているユグノーの解放を模索した結果、カルヴァンが創設したジュネーヴ学院の学生として勉学に励むことになった。
 ディマンシュの従弟アルベール(アル)は、ディマンシュの援助によって、宗旨と身分の違いを乗り越えて、カトリックの貴族の娘シャルロットと結婚する。しかし、シャルロットの父親ルール氏に発見され、二人は引き裂かれる。
 ルール氏はアルに、自分の息子アドルフとラテン語で議論して勝てば婿として認めると約束する。
 屋敷に連れ戻されたシャルロットは、アルの子どもを妊娠しており、村の老夫婦リュックとリザベットの協力で、無事、アントワーヌを出産する。


 シャルロットが生んだ赤ん坊アントワーヌの存在については、決して外に漏らさぬよう、ルール家の中で厳しい緘口令が敷かれていた。したがって、彼女が妊娠していることにも気づかず別離を強いられ、ただ単に彼女の病が癒えて元気になったとだけ知らされたアルは、自分がいつの間にか父親になっていることを知る由もなかった。
 アントワーヌが生まれた時に屋敷にいた者たちをのぞけば、真の父親よりもこの赤ん坊の存在を先に認識することになったのは、シャルロットの兄アドルフであった。
 聖誕祭の休暇で一年ぶりに帰宅したアドルフは、家の中に奇妙に甘酸っぱい何かが蒸れたような匂いを嗅ぎ取った。どんな小さなことでも異変を感じ取る訓練をしてきたアドルフは、感覚を研ぎ澄まして、この不可思議な匂いの元を探ろうとした。しかしながら、彼が特に探りをいれずとも、事態はすぐに明らかになった。シャルロットが胸に赤ん坊を抱いて出迎えたからであった。アドルフは目を見張った。
「その赤ん坊はいったい?」

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この記事へのコメント

2007年12月02日 00:47
ついにアドルフに知られてしまいましたか。
アドルフはびっくり仰天したでしょうね。
父親と感覚が違うから、真実を知ったら、ラテン語がどうのという悠長なことは言わないかも。
さてどうなる?
短気なアドルフ。助演男優賞は無理だと思うが…。
「うるさい」
2007年12月02日 11:31
沢里さん、さあ、たいへんな事態になってしまいました。アドルフにはどんな言葉が告げられるのでしょうか。そして彼はルール氏の台本どおりの自分の役回りを演ずることを承知するのでしょうか?

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