第7話 「灰色猫」―1

これまでのあらすじ
 ディマンシュが尊敬していた伯父オーギュストの妻ガブリエルは元娼婦であった。弾圧に抗した英雄として村人たちの尊敬を集めている男は、そんな彼女の過去を知っており、ひそかに彼女に侮辱的な言葉を放った。それを知ったディマンシュは男を殴りつけるが、事情を知らない村人たちの誤解を招いてしまう。
 ガブリエルはディマンシュには自分の過去を何もかも打ち明けるが、息子のアルには黙っておいてほしいと頼みこんだ。


 アルが起きてきた時、二人はまだ居間で話し込んでいた。いや、ガブリエルがひたすら一方的に物語り、それにディマンシュがとことん聞き役としてつき合っていた。そんな二人を見てアルは驚いた。
「あれっ、母ちゃんと兄貴、二人してえらく早起きじゃないか。早起きなんかしなくてもいいって言ってたのに。」
「ありゃ…、もう朝なのかい。」
 ガブリエルは自分が語る話に自分自身夢中になっていたので、アルの声にようやく我に返った。
「おばさんの話を聞いていたらつい夜更かししてしまったよ。さあ、朝食にしようか。さすがにお腹がすいたよ。」
 ディマンシュは立ち上がって食事の準備に取りかかった。とは言っても、昨夜の残った料理を並べるだけの簡便なものであった。食前の祈りを手短に済ませ、ガブリエルとアルは食べ始めた。しかし、ディマンシュは祈りの姿勢をくずさなかった。
『長いお祈りだね。あたしのために祈ってくれてるのかね…。』
 ガブリエルは考えた。しかし、いくらなんでも彼の祈りは長過ぎた。

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この記事へのコメント

2006年05月12日 18:39
前回のレスは本当におっしゃる通りです。私自身経験がありますが、本屋での成人雑誌の購入時のエピソードは、友人達との語り草です。今の少年はそういう経験ができないとは、全く悲しいことです。性的な本を見れば性犯罪を犯すとは、なんという短絡的思考でしょう。国家権力がそういう単純さで人々の自由を奪うことに憤りを感じます。私の以前の行きつけの本屋も成人雑誌を多数扱っていましたが、家族経営でとても暖かな方々でした。さて物語ではディマンシュの祈りが長過ぎるようですが、ひょっとして寝てるのでは?
2006年05月13日 09:43
いやあ、ご推察通りです。シリアスな中にもついギャグを入れてしまう性分でして…。

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