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陽気な日曜日

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陽気な日曜日
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 並ぶものなき権勢を誇るフランス王ルイ14世の治世、それは、ヴェルサイユ宮殿に象徴される栄華の時代であると同時に、幾度にもわたる戦争と宗教弾圧の時代でもあった。
 そんなルイ14世の絶対権力に一矢を報いた人々がいた。彼らはやがて「レ・カミザール(Les Camisards)」と呼ばれることになる。

春乃すずながお送りする初めての長編歴史小説です。
初めてお越しの方は、「プロローグ」よりお読みください。記事の右上の「>>」または、下方の「後記事>>」をクリックすると、連続して読めます。また各章ごとの冒頭にこれまでのあらすじを掲載しています。

*コメント大歓迎! 過去記事へのコメントももちろん歓迎!

*目次は右側のスペースにあります。

ただいま小説第4部を連載中です。

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タイトル 日 時
第38話 闇の中へ-5
 七月の太陽はいつもなら長々と西の空にとどまり、光を放ち続けているはずであった。しかし、アルにとって都合のいいことに黒雲が空を覆い始めた。アルは意を決して、リュックに示された場所を目指して屋敷の外壁を登っていった。周囲が次第に暗さを増していく中で、庭木の枝をつかみながら壁のくぼみに足をかけ、慎重に歩を進めていった。黒雲は空一杯に広がり、やがて驟雨(しゆうう)をもたらした。この激しい雨によって物音がかき消され、天が自分に味方してくれているようにアルは感じた。しかも、さらに具合のいいことに、武装した... ...続きを見る

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2009/07/05 09:08
第38話 闇の中へ-4
「アル、悔しいじゃろうが、よくあの場を我慢した。」  アルは何か言おうとしたが、口を開くと言葉よりも嗚咽が漏れ出てきそうだったので、唇を固くかんだ。 「アル、まさかこのままおとなしく門の外に出て行くつもりじゃなかろう。一目シャルロットに会いたいとは思わんか。」  アルは思わずリュックの顔をまじまじと見つめた。 「わしがこの屋敷で何年暮らしてきたと思っておる。シャルロットがどこの部屋にいるか、そしてどの窓の鍵が壊れたままになっているかも、ちゃんとわかっておる。」  アルはようやくさっきの... ...続きを見る

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2009/07/04 08:30
第38話 闇の中へ-3
 リュックはルール氏に見られないようにそっとアルに目配せをした。アルはその目配せの意味が何なのかわからなかったが、ここで思うがままに一暴れしてみても、むなしい結果しかもたらさないことだけはわかった。悪くすれば、シャルロットに再会できないままにアドルフかルール氏の剣にかかって命を落としてしまうかもしれない。 「わかった…。じいさん…。」  アルは力なくうなだれた。 「さ、今は引き下がるのじゃ。これからのためにな…。」  アルをつれて退出しようとするリュックに、ルール氏は冷水のような言葉を浴... ...続きを見る

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2009/07/03 08:22
第38話 闇の中へ-2
「反乱を起こしたユグノーというのは君の仲間ではないのかね。」 「おれはそんな反乱のことは今初めて聞きました。」 「だが、君はユグノーだ。今ここでカトリックへの改宗を誓わない限り、娘と会わせるわけにはいかない。」 「そんなこと、約束の中に入っていません。おれはラテン語の議論で彼を詰まらせました。さっきそのことを認めたばかりではありませんか。」 「大前提が覆されたのだ。わしがラテン語の習得を条件としたのは、君がこの世の中で出世の手だてを見つけられるようにするためだったのだ。そうなってこそ、わ... ...続きを見る

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2009/07/02 14:24
第38話 闇の中へ-1
 これまでのあらすじ  1685年、フランスの絶対君主ルイ十四世は、信教の自由を定めたナントの勅令を廃止し、カトリック以外の宗教を禁じた。それ以来、フランスのプロテスタント(ユグノー)は、厳しい迫害を受けてきた。  1702年7月24日、セヴェンヌで、最も忠実かつ厳格に国王の命令を実行していたシェーラ司祭の屋敷が襲撃された。捕らえられていた者たちは解放され、シェーラ司祭は殺害された。「カミザールの乱」の開始を告げる出来事であった。  カトリックの貴族の娘との結婚をその父親に認めてもらうため... ...続きを見る

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2009/07/01 08:14
慧眼なる読者との対話(38)
慧眼なる読者との対話(38)  読者の皆様、第37話はいかがでしたでしょうか。この歴史的事件でディマンシュが何らかの役割を果たすのではないかと考えていた人にとっては当てが外れたかもしれません。現在ディマンシュはジャン・カヴァリエといっしょにジュネーヴからセヴェンヌに移動中です。ジャン・カヴァリエは御覧の通りこの事件に何の関わりもありません。彼と行動を共にしているディマンシュもまた同じです。そしてアルはルール氏の屋敷でアドルフを相手にラテン語の勝負をしており、もちろんこの事件には関係しませんでした。 ...続きを見る

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2009/06/30 09:03
第37話 ポン・ド・モンヴェール-29
第37話 ポン・ド・モンヴェール-29  囚われていた少女たちの様子は先刻のヴィオレットに対する態度とは全く異なっていた。シェーラ司祭を見る彼女らの目にはぎらぎらした憎悪とおぞましいものに対する嫌悪、そして口に出すことがはばかれる羞恥の念が宿っていた。セギエは、彼女たちの表情が、女預言者ビションがいまわの際にシェーラ司祭を睨んだ時の表情とそっくりであるのに気がついた。彼は彼女たちがシェーラ司祭から受けてきた仕打ちがどのようなものであるかを瞬時に悟った。  セギエは剣を振り上げ、渾身の力を込めてシェーラ司祭の脳天を一突きした。すると、... ...続きを見る

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2009/06/29 09:24
第37話 ポン・ド・モンヴェール-28
 午後十時三十分、メゾン・アンドレの屋根が焼け落ち、あたりはいっそう明るくなった。その光に照らされて、シェーラ司祭は下着姿で庭の隅にうずくまっているところを発見された。二人の兵士を逃がした後、まもなくのことであった。  シェーラ司祭は橋の中央にまで連れてこられた。彼があれほどまでに傲慢に扱ってきた人々や、わずか一時間前には足かせを付け牢獄に入れていた人々に囲まれ、彼はひざまずき悲しげな声で言った。 「皆様方…。」  こんな言葉がシェーラ司祭の口から出るとはその場にいた人々にはまったく思いも... ...続きを見る

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2009/06/28 08:14
第37話 ポン・ド・モンヴェール-27
 少女たちは口々にヴィオレットの助命を嘆願し始めた。 「この人はわたしたちの足かせをゆるめてくれたの。」 「とても親切だったわ。」  ヴィオレットに向けられた娘たちの温情はあふれんばかりのものであったので、それは若い兵士の方にも染みわたった。 「こちらの人もわたしたちにひどいことは何もしなかったわ。」 「お願いだから許してあげて。」  少女たちに続いて、少年たち、そしてマシップとエティエンヌも口々にヴィオレットを擁護した。そこでセギエは二人の兵士に言った。 「今後我々に対して決して... ...続きを見る

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2009/06/27 09:27
第37話 ポン・ド・モンヴェール-26
 マゼルの声に応えてラポルトが銃を一発撃った。その銃弾に当たったのか、人影は中庭に落ちていった。しかし、マゼルとラポルトがその場に行ってみると誰もいなかった。しかし、さらに上から若い兵士が、そして最後にヴィオレットが部屋の中にあった衣服や古着を背負って降りてきた。庶民の出であったヴィオレットは豪華な衣服を燃えるがままにしておくことはできなかったのである。この二人の兵士は、マゼルらに取り囲まれると観念し、抵抗もせずに捕縛された。  シェーラ司祭は脚の骨を折って動けなくなっていたが、先に降りていた... ...続きを見る

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2009/06/26 09:29
第37話 ポン・ド・モンヴェール-25
「焼け死ぬ〜!! 生きたまま焼かれるなんていやだ〜!!」  人々は地下室にもう一度飛び込んだ。扉の鍵を手に入れることができなかったので、今度は石でできた壁を崩し始めた。火事場で人が発揮するとてつもない力の結集によって、石の壁は崩れ、ジャン・マシップはようやく助け出された。彼はまだ三十を過ぎたところだというのに、恐怖のために髪が真っ白になっていた。しかし、それ以外の外傷はなかった。 「やけど一つ負ってないぞ!」 「奇跡だ!」  人々は夢中になってマシップの無事を讃えたが、一階から発した炎は... ...続きを見る

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2009/06/25 08:35
第37話 ポン・ド・モンヴェール-24
「シェーラ司祭を探し出せ!」 「地下室の鍵を手に入れろ!」  三人の男たちが鍵を求めて二階への階段を上っていった。その時、屋敷内に銃声が響いた。従僕のミシェルが階段を駆け上ってくる者たちに向かって発砲したのであった。銃弾は先頭にいたジャン・シャプタルという男に当たり、彼はもんどりうって階段から転げ落ちた。シャプタルは「おれを撃った者はその罰を受ける」と言って意識を失った。あとの二人も階段を駆け下り、シャプタルの介抱に当たった。  セギエは血にまみれたシャプタルを見て彼をひどく悲しんだ。シャ... ...続きを見る

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2009/06/24 08:57
第37話 ポン・ド・モンヴェール-23
 しかし、しばらく待ってもメゾン・アンドレは何の動きも見せなかった。業を煮やした人々は、また囚人たちの解放を求めて叫びだした。しかし、屋敷からは何の応答もなかった。門にはいつのまにか固くかんぬきがかけられていた。 「くっそお! 聞こえないふりをしてやがるのか!」  ジョアニーとマゼルは斧を持っている者から借りて、入り口の門を壊し始めた。事ここに至ってはじめてメゾン・アンドレの中は騒然としてきた。ついに門は破壊され、群衆は一階になだれ込んだ。囚人たちの見張りをしていたヴィオレットは抵抗すること... ...続きを見る

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2009/06/23 09:13
第37話 ポン・ド・モンヴェール-22
 ルー司祭は一階に降り門を開けると、群衆の前に姿を現した。彼は大胆不敵な人物ではなく、単に想像力を欠いていただけであった。 「君たちは何だね? いったい何を求めているんだ?」  この問いにマゼルが答えた。 「我々は神の子たる囚われの兄弟姉妹の解放を要求しているのだ。」  ルー司祭はぽかんとした顔でマゼルの言った言葉を繰り返した。 「囚人たちを要求している?」 「そうだ。われらの仲間を返してもらおう。」  ルー司祭は二階の窓に向かって叫んだ。 「司祭殿!」  シェーラ司祭はこの呼... ...続きを見る

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2009/06/22 09:13
第37話 ポン・ド・モンヴェール-21
 この若い兵士は群衆が近づいてくるのを見て叫んだ。 「司祭様、なにやら騒がしい音が近づいてきました。危険ですので司祭様は部屋からお出にならないようにしてください。」  しかし、シェーラ司祭は自分の身に危険が迫っているとは少しも考えなかった。 「それは囚人たちが騒いでいるのではないのかね。」 「違います。外から聞こえてきます。しかもだんだんこちらに近づいて参りました。」  そう言われて、ようやくシェーラ司祭も窓を開けた。たしかに短い隊列がギルー橋を渡ってくるのが見えた。それでもなお、シェ... ...続きを見る

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 2

2009/06/21 08:14
第37話 ポン・ド・モンヴェール-20
 彼らがブージェの山を出発したのは午後八時半であった。七月の夕暮れは長く、この時間でもまだ十分光をとどめていた。それから彼らは一時間ほどで町のはずれに着いた。ようやく薄暗くはなってきたが、彼らの姿は町の人々の目にさらされ、彼らの歌は町の隅々まで響き渡った。囚人救出作戦はこっそり夜陰に乗じて行うべきではないというのが、セギエの考えであった。町の住民の圧倒的多数は「新改宗者」であった。隊列を組み、禁止されている詩編歌を公然と歌うこの大胆な示威行動によって、町の住民を味方につけ、あるいは少なくとも中立... ...続きを見る

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2009/06/20 07:48
第37話 ポン・ド・モンヴェール-19
「一人一人が自分の位置を離れるな。」  そう言ってセギエは歩き始めた。彼の横には、ジョアニー、ジャン・クデルク、そしてマゼルが並んだ。ジャン・クデルクの兄サロモンといとこのジャック、ランポン、マゾリック、は列の途中や最後尾に入って皆を促した。彼らは詩編歌を歌いながらポン・ド・モンヴェールの町へと入ることにした。セギエはまずもって詩編歌五十二番を歌った。それは次のような歌詞であった。 力ある者よ おまえはなぜ悪事を誇る おまえの考えは破滅... ...続きを見る

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2009/06/19 07:47
第37話 ポン・ド・モンヴェール-18
 しばしの休憩の後、集めてきた武器の点検がなされた。六十人の人員に対して、銃と短銃を合計しても二十丁に過ぎなかった。その他の武器と言えば、剣、矛の付いた槍、斧、鎌が数丁ずつ、中には銃の代わりに棍棒を持ってきた者もいた。 「遠目から見りゃあ、これを銃と見間違えるだろうよ。それに、どうせおれは銃の撃ち方なんか知らないんだから、振り回すだけなら棍棒でも銃でも同じことさ。」  マゼルは心の中で密かに思った。 『満足に銃を扱えるのはラポルトさんとジョアニーぐらいか。銃も長い間使った形跡がなくて錆び付... ...続きを見る

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2009/06/18 08:22
第37話 ポン・ド・モンヴェール-17
 フルレットは話を続けた。 「おれがあまりに足を痛がっていたら、見張りの兵士の一人がその足かせをゆるめてくれたんだ。おれはしめたと思ったね。その兵士が行っちまってから、おれはさらに足かせを動かして隙間を広げることに成功した。それから、ちょうどおふくろが面会に来たんだが、見張りは油断していたのか、おれとおふくろを二人だけにした。それをいいことになんとか逃げ出せたってわけだ。しかし、おれは今でも他の囚人たちを置いておれ一人だけで逃げ出したことを悔やんでいる。あの時の女の悲鳴は今も頭の中を駆けめぐり... ...続きを見る

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2009/06/17 08:40
第37話 ポン・ド・モンヴェール-16
 家族でやってきた者はボンネたちだけではなかった。ジャック・クデルクは父親を、サロモンは弟のジャンを、ジャン・ランポンもまた弟のアントワーヌを連れてきた。父子、兄弟、従兄弟、義兄弟がそろってやってくるところも多かった。  集まった中にはメゾン・アンドレに囚われの身になったことのある男もいた。この男もジャック・クデルクという名前なので、先に登場した同姓同名の人物と区別するために彼に関しては通称「フルレット(お花ちゃん)」で呼ぶことにしよう。フルレットはやせた弱々しい体つきをした三十歳の男であった... ...続きを見る

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2009/06/16 08:08

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