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陽気な日曜日

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陽気な日曜日
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 並ぶものなき権勢を誇るフランス王ルイ14世の治世、それは、ヴェルサイユ宮殿に象徴される栄華の時代であると同時に、幾度にもわたる戦争と宗教弾圧の時代でもあった。
 そんなルイ14世の絶対権力に一矢を報いた人々がいた。彼らはやがて「レ・カミザール(Les Camisards)」と呼ばれることになる。

春乃すずながお送りする初めての長編歴史小説です。
初めてお越しの方は、「プロローグ」よりお読みください。記事の右上の「>>」または、下方の「後記事>>」をクリックすると、連続して読めます。また各章ごとの冒頭にこれまでのあらすじを掲載しています。

*コメント大歓迎! 過去記事へのコメントももちろん歓迎!

*目次は右側のスペースにあります。

ただいま小説第4部を連載中です。

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タイトル 日 時
第45話 悪夢-10
 この会議にはマルトも参加していた。マルトは自分の言葉通りあれから泣くことはなかった。少なくとも彼女が涙をこぼしている姿を誰も見ることはなかった。しかし、悲しみを堪え忍ぶ陰鬱な表情が彼女から消え去ることはなかった。その彼女が久しぶりに張りのある声をあげた。 「そうだわ!」 「マルト、何か名案でも?」 「ええ、わたしったら、これまでどうしてあの人のことを思い出さなかったのかしら。」 「ぜひ聞かせてくれ。」 「お父様の知り合いにユグノーの貴族がいるの。サルガ男爵といって、銃士隊の将校をなさ... ...続きを見る

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2010/02/10 11:17
第45話 悪夢-9
 ポンピニャンの戦闘はカミザール結成以来はじめて数百人規模の犠牲を出す大敗北となった。これを立て直すべき人材は明らかに不足していた。マゼルは理由を明らかにしないまま隠棲し、ディマンシュは寝台から起き上がれなくなっていた。  作戦会議には自ずと重苦しい雰囲気が漂っていた。 「ところでディマンシュの具合はどうなんだ?」 「いつになったら治るんだ?」 「いったい何の病気なんだ?」  みんなが口々に問いかけてくるのに対して彼の世話をしているアルが答えた。 「よくわからない…。それを一番判断で... ...続きを見る

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2010/02/09 10:25
第45話 悪夢-8
 しかしながら、一七〇一年六月十六日――男爵はこの日付を片時も忘れたことがなかった――、彼の家庭は無惨にも崩壊した。 『あなたはこんなにもユグノーが迫害されているのを見て見ぬふりをし続けるおつもりなの。わたくし、あなたのような不信心な方といっしょにいるのはもうたくさん。子どもたちの教育にも悪いわ。』  彼の愛する妻はそう言って、子どもたちを連れてジュネーヴに行ってしまった。あれは悪い夢だったのだと何度思ったことだろうか。彼はその時のことを思い出しながらいつもため息をついていたが、それは苦い悔... ...続きを見る

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2010/02/08 09:46
第45話 悪夢-7
 ポンピニャンの戦場の跡を馬車に乗った初老の貴族が通りかかった。彼の馬車の後には数人の従者が騎馬で従っていた。まだ埋葬されていない死体があちこちに転がっているのを見て彼はつぶやいた。 「むなしい…。なぜ殺し合わねばならないのか…。信仰…。そんなものにはたして命を懸ける値打ちがあるのか…。」  彼は従者たちに命令した。 「遺体を葬ってやれ。」 「はっ、男爵様。」  この男、フランソワ・ド・ペレ・ド・サルガ男爵はユグノーの貴族で、元は近衛銃士隊の将校であった。こうした経歴を持ちながら彼はカ... ...続きを見る

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2010/02/07 09:11
第45話 悪夢-6
 朝になった。 「おい、ディマンシュ、起きられるか。」 「ああ…。」  ディマンシュは力なく目を開けた。アルはあれから彼が眠っていなかったことに気がついた。本当に眠っていたなら声をかけられただけで目を覚ますということはないはずだし、十分な睡眠を取って目覚めたのなら、アルが声をかける前に起きているはずなのだから。 「何か食べるか。」 「今はいい。」 「食べなけりゃ治らないぜ。」 「ぼくは病人じゃない。そんなにぼくのことを構わなくていい。」 「病人じゃない?」 「そうだ。こんな人手... ...続きを見る

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2010/02/06 11:04
第45話 悪夢-5
 アルが言葉をかけても、ディマンシュは苦しげに叫び続けた。アルはディマンシュを落ち着かせようと片手で彼の手を握りしめ、もう片方の手を額にやった。すると、少しは落ち着いたのか叫びを上げるのは止まった。それでもしばらくの間ディマンシュはうめいたり、わけの分からないことをつぶやいたりしていた。アルはこんなディマンシュを見るのが初めてだった。彼自身も不安に駆られ、早く朝になってくれればと願いながら夜の時間を過ごした。 ...続きを見る

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2010/02/05 08:46
第45話 悪夢-4
 ウーゼに戻ったディマンシュの様子がただならぬものであることに真っ先に気がついたのはアルとジャンであった。 「眠れないだって!?」 「君が!?」  他の者たちは眠れないぐらいのことでどうしてこの二人が驚いているのかさっぱりわからなかった。ディマンシュはアルとジャン以外の者と同室になるのを避けていたので、この二人以外は彼の睡眠時の様子を知る者はいなかったからである。 「いったい何があったっていうんだ?」 「マゼルがおれたちの頼みを断ったのか。」 「まあ、そういうことだ。」  これまで... ...続きを見る

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2010/02/04 10:34
第45話 悪夢-3
「どうした?」 「いや…。なんでもない。」 「なんでもなくはなさそうだが…。」 「この印を付けている所…、みんな…焼いたのか?」 「ああ、本当だ。おれの記録が信用できないって言うのか? 何なら実際に行って見てきたらどうだ。」 「いや…。その必要はないだろう。実に正確に描かれている。」 「おれは別にこれまでやってきたことが間違ってたなんて思ってやしねえ。」 「そうとも。間違ってはいない。」 「間違ってやしねえんだが…、今はどうにもやる気がしねえんだ。」 「そういう時もあるのだろう... ...続きを見る

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2010/02/03 10:02
第45話 悪夢-2
「ディマンシュ、悪いが今のおれはどうしても武器を持つことができねえ。」 「君が武器を持てない?」 「ああ、可笑しければ笑えよ。この闘いを始めたアブラアム・マゼルがこんなていたらくになるなんて…。」  ディマンシュはこんなマゼルを見るのは初めてであった。しばらくの沈黙の後、ディマンシュは尋ねた。 「どうしてそういうことに?」 「ふん、おれにもわからねえ。」  本当にわからないのか、とぼけているだけなのか。ディマンシュはマゼルの本心にたどり着くための手がかりをつかもうと質問を続けた。 ... ...続きを見る

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2010/02/02 10:41
第45話 悪夢-1
これまでのあらすじ  1702年にセヴェンヌで信教の自由の回復を求めて反乱を起こしたユグノーは「カミザール」と名乗るようになり、セヴェンヌで地歩を拡大していった。  しかし、カミザールの一員マゼルはリヴェール神父との出会いによって精神的に混乱をきたして引きこもり、カミザールの部隊の中ではしかや天然痘が流行りロランやジャン・カヴァリエが病に倒れた。  その一方、国王軍率いるブログリ伯爵は出世病にとりつかれ、無謀な作戦でかえって大敗北を喫し、有能な軍人プール隊長は戦死した。プール隊長の副官を務... ...続きを見る

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2010/02/01 08:37
慧眼なる読者との対話(45)
 読者の皆様、第44話はいかがでしたでしょうか。カミザールにとって宿敵とも言えるプール隊長を倒したのもつかの間、事態はより悪い方向に向かってしまったようです。おおぜいの仲間を失い、さらに事態を打開しようとしたディマンシュの様子までおかしくなってしまいました。しかし、ディマンシュが口にした「眠れない」という言葉がいかに深刻な状態を示しているかを理解しているのは、この時点ではジャンとディマンシュだけです。 ...続きを見る

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2010/01/31 20:00
第44話 熱病-31
第44話 熱病-31  そこでディマンシュが言い出した。 「もう一度マゼルを訪ねてみよう。この苦境を乗り切るには彼の力が必要だ。」  彼の冷静さはその場の雰囲気を落ち着かせるのに役にたった。マルトが涙をこらえて言った。 「そうね…。みんなで力を合わせて乗り切らなくてはね。わたしはあなたたちのお姉さんだもの。もう泣かないことにするわ。」  カトリーヌもロランの弟たちもロランの死で最も痛手を受けているマルトがそう言うのを聞いて涙をぬぐった。 ...続きを見る

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2010/01/31 09:30
第44話 熱病-30
 この敗北は早馬によってウーゼに伝えられた。ジャンはディマンシュとアルの献身的な看病によってどうにか命を取り留めていたが、この知らせを聞いて衝撃を受けた。 「信じられない…!」  ジャンはそう言ったままあとは言葉を失った。ディマンシュが眉をひそめて言った。 「ロランの言うとおり、新しく赴任してきた将軍は侮れない。」  「それを一番わかっているはずのあいつが…。」  アルは肩を落とした。  そこにマルトとカトリーヌがやって来た。 「ねえ、嘘でしょう。ロランが死んだなんて。」  しば... ...続きを見る

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2010/01/30 08:58
第44話 熱病-29
 この勢いに竜騎兵の乗っている馬が恐れをなし、引き下がった。突破口は切り開かれた。そこに後のカミザールたちも続いた。しかし、いったん破られた横隊はすぐに周囲から補充され、一直線になって逃げるカミザールの脇から攻撃をし始めた。戦場は完全に乱戦状態となった。モントルヴェル元帥が率いてきた兵士の中には傭兵も大勢いた。彼らは殺戮の技にかけては普通の兵士よりも熟達していた。しかし、彼らの目的は戦いに勝つことではなく、稼ぐことであった。したがって彼らはカミザールを一人倒すととどめを刺した上で身につけているも... ...続きを見る

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2010/01/29 09:48
第44話 熱病-28
 ロランといっしょに馬を並べていたカチナはロランに言った。 「ロラン、これはどうも怪しいぞ。すぐにこの村を出た方がいい。」  ロランの後ろに控えていたマクシミリアンも言った。 「わしもそう思う。そもそもこの村はカトリックが多く住んでいる。住民が味方しない中で闘うのは得策ではない。」 「そうだな。よし、退却だ!」  時すでに遅く、ロランが命令を出した瞬間、家々の窓が一斉に開き、そこから銃弾が発射された。 「しまった!」  カミザールが得意とする待ち伏せ作戦のお株を奪われた格好になり、... ...続きを見る

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2010/01/28 10:09
第44話 熱病-27
 山麓と平野の境にあるガンジュの村は昔から多くのユグノーが住んでいるところであった。ロランが七百人の部隊を連れて行くと、守備隊はその姿を見ただけで逃げだし、住民たちはカミザールの来訪を諸手を挙げて歓迎した。この村にはカトリックの住民もおり彼らの教会もあった。しかし、ユグノーたちがカトリックの住民たちに手出しをしないでくれ、教会も焼かないでくれと懇願するので、ロランはうなずいた。 「ああ、ディマンシュやアルの言うとおりだ。ユグノーとカトリックがこんな関係を続けてきた村もあるんだなあ。」  この... ...続きを見る

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2010/01/27 08:28
第44話 熱病-26
 この頃のウーゼでは今度はジャンが病気にかかっていた。ディマンシュの見立てではそれは疱瘡、すなわち天然痘であった。ジャンと同じ部屋で寝ていたディマンシュとアルはそのまま部屋から出ることができなくなり、そのまま自ずと介護要員になった。ジャンは自分の部隊をロランに任せることを決定した。  こうして三月には山麓と平原の合同部隊がロランの指揮下に入ることになった。ロランは勢力範囲をセヴェンヌ山麓からさらに南西の平原地帯にも広げようと考えた。ロランはこれまでにない七百人もの大部隊を引き連れ意気揚々と出発... ...続きを見る

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2010/01/26 09:23
第44話 熱病-25
 モントルヴェルはバヴィル知事の賞賛に気をよくし、さらに自説を展開した。 「つまり、カミザールの正体は…、全員とは申しませんが、その中枢にいるのは明らかに敵国人です。そしてフランス人であっても敵に買収された者たち。これももはや敵国人と同じ、いやそれ以上に始末に負えない裏切り者と断じていいでしょう。これまではユグノーとはいえ同じフランス人であるという甘い認識で彼らに臨んでいたのではありませんか。」 「ううむ。言われてみればそうかも知れませぬ。」 「現在わがフランスはオーストリア、イギリス、オ... ...続きを見る

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2010/01/25 10:08
第44話 熱病-24
 ブログリ伯爵の後任に選ばれたのはルイ十四世のお気に入りの一人モントルヴェル元帥であった。モントルヴェル元帥は二月半ばにモンペリエに到着し、バヴィル知事と会談した。 「おお、元帥殿、ラングドックへようこそ。国王陛下が寵臣中の寵臣であるあなたを派遣してくださるとは光栄の至りです。」 「この私にお任せくだされば、不忠なるユグノーを即座に退治してみせましょう。」 「実に頼もしいお言葉。」 「それにしても貴族ならともかく百姓上がりの者たちに半年以上も苦しめられているとはまったく不思議ですな。いや... ...続きを見る

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2010/01/24 11:58
第44話 熱病-23
「確かにそうかもしれない。しかし、カトリックの連中はユグノーの存在そのものを消し去ろうとしてきたんだ。この十七年間の苦しみを考えるとそれは甘すぎるんじゃないのか。」  こう主張する者に対してジャンはディマンシュの言ったことを繰り返した。 「だから無条件にではない。彼らが我々に敵対しない限りでだ。」  アルも力説した。 「そうだよ。カトリックの中でもユグノーといっしょに暮らしていきたいと考えている者はきっといる。そんな人たちまで敵に回すことはないよ。」  カトリーヌが熱っぽいまなざしでア... ...続きを見る

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2010/01/23 09:11

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