すずなとほうしの取材旅行(18)

 さて、はじめてのフランス人の私宅に入る時、ほうしとすずなは日本から持参してきたスリッパに履き替えようとしたら、そんなことはしなくていいと言われた。たしかに、ピエールもコレットも土足でどんどんキッチンにもダイニングにも入っていく。
 コレットに「プールは好きか?」と聞かれ、すずなが「プール…なんだったっけな」と考えていると、コレットは鳥の鳴き真似をし出した。それで「鶏」のことだとわかって、「ウイ」と答えた。

 二人は二階の寝室に案内された。山小屋の二階。これで干し草のベッドでもあれば、まさにハイジ気分である。中には湯船のある風呂が備え付けてあり、二人が風呂から出てくると、台所ではピエールとコレットが一緒になって料理を作っていた。男子厨房にはいらずはフランスの流儀ではなさそうだ。それともピエールが料理を作るのが好きなだけなのか。とても楽しそうに材料を切り、フライパンで炒めていた。
 最初にオードブルとしてサラダが出て、それから主菜が登場する。それを食べ終わると、チーズが出される。すずなは一切れ切ってもらったのを全部食べた。ほうしははじめは断ったのだが、フランス料理にはチーズは欠かせないと言われてごく薄く切ってもらった。日本のチーズと違ってややくせがあるが、食べ慣れるとやみつきになるのだろう。しかし、冷たい牛乳ですらお腹に響くほうしにとっては、その薄い一切れを食べるのがやっとであった。
 チーズを食べ終わるとデザートとして果物が出てくる。フランスでは家庭料理でもフルコースの順番で料理が出てくるのだった。

 食事の前後に、お互いの年齢や職業、家族構成などについていろいろと情報を交換しあった。ピエールが定年退職した元大学教授であるということはそれまでにやりとりしたメールからわかっていたが、コレットが大学の事務職員であることはここで初めてわかった。すずなの知り合いにも学校の事務職員を務めている人がいる。てきぱきした雰囲気などはよく似ている。しかしながら、日本とフランスでは同じ職業であっても、その待遇はかなり違う。
 公立の学校に勤務するコレットには夏休みがまるまる2ヶ月あるのだという。だからこそ、こうして夏にはセヴェンヌの山小屋に夫と共に泊まりに来ることができるのだという。しかし、すずなの知り合いの場合やはり公立の学校に勤務しているのではあるが、夏休みはたったの5日間であった。
「たった5日!」
 ピエールとコレットは驚いたが、民間企業に勤めているほうしの夫の休みが2日だと聞いてさらに驚いていた。土日を合わせてようやく4日連続の休みが取れるだけなのである。日本ではそれが当たり前と思っていたがフランスの労働者からすればとてつもなく過酷な労働条件なのである。
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 翌朝、山小屋のそばに段々畑があるのを見せてもらった。そこでトマトなどを作っている。ここで取れた野菜を料理に使うのである。
 この取れたてのトマトをオリーブオイルとマスタードを混ぜたドレッシングで食べるとこれがまたジューシーでおいしかった。このトマトも甘みが勝っている。

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