第28話 尋ね人-1

これまでのあらすじ
 1685年、フランスの絶対君主ルイ十四世は、信教の自由を定めたナントの勅令を廃止し、カトリック以外の宗教を禁じた。これまで共存していたユグノー(カルヴァン派のプロテスタント)とカトリックの人々との間には、深い対立が生じることになった。多くのユグノーがフランスから亡命し、あるいはカトリックに改宗していったが、南フランスのセヴェンヌには、心の底から改宗したのではない人々が数多く存在していた。
 そのような人々の中で、鍛冶屋のラポルトらを中心として、ジュネーヴから説教者を招請しようという運動が秘密裏に進められていた。ユグノーの青年ロランとマゼルはラポルトの考えに賛同し、そのための資金集めに勤しんでいた。しかし、彼らはいつしか目的をおろそかにして金集めのために手段を選ばないという方向にのめりこんでしまった。ロランとマゼルはそのことでラポルトに激しく叱責され、ロランは「デュランダル」と名前をつけている短剣をラポルトに取り上げられてしまった。そして、二人を誤解したままになっているジャン・カヴァリエに詫びを入れるよう命じられた。二人はそこで、ジャンの勤めているアンデューズのパン屋まで行くが、結局その目的を果たすことはできずじまいに終わった。


 マゼルは早くジャンと和解してラポルトに言われた約束を果たしてしまいたかった。その点に関してはロランの方がむしろ切実であったはずなのに、ロランときたらあの日以来ラコンブの農場を訪れることもせず、連絡ひとつよこさなくなってしまった。マゼルは次の訪問の日取りを早く決めようと手紙を出してみたり、人に伝言を頼んだりしてみたが、何の音沙汰もなかった。
 そのうちラコンブとの契約が終了して、自由の身となったマゼルは、自らロランの家に様子を見に行った。ロランの家は、先にも書いたとおり、アンデューズから北北西の方向の、ガルドン・ダンデューズ川に沿って一時間半ほど上流に向かって歩いたスーベラン村にあった。一方、マゼルの家は、その川の別の支流ガルドン・ド・サン・ジャン川を北西にさかのぼったところにあった。二人の家は二つの川と小さな山一つで隔てられていた。山すそをめぐって川沿いに歩いていくと二時間ほどかかるが、体力のある者はむしろ山を越えて行った。登りには時間がかかるが、下りは山道を一気に駆け下りるのであった。そうすると一時間もあれば到着する。こうして、この二人は以前からお互いの家をよく行き来していた。
 ロランの家に到着すると、マゼルは勝手知ったるロランの仕事場に真っ直ぐ向かった。
「おい、ロラン。」

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