第6話 マグダラのマリア―1

これまでのあらすじ
 十九歳のユグノーの青年ディマンシュは、亡き伯父が心酔していた著作を求め、修道士に変装し、十二歳の従弟アルと共にカトリックの教会にもぐりこむ。そこで貴族の娘シャルロットと知り合い、彼女はディマンシュに、アルは彼女に恋心を抱く。
 シャルロットの父親は、教養豊かな修道士を気に入るが、兄のアドルフは怪しい人物であるとにらむ。
 そして、とうとうディマンシュらの正体はシャルロットの知るところとなる。ディマンシュとアルは彼女と会うことを諦めるが、シャルロットの方は諦めようとはしていない。

 ガブリエルは、リュックの外科医の仕事を住み込みで手伝っていたが、約束の期間が終ったので、久々にわが家へ戻ることになった。慣れ親しんだ道を歩いていると、一人の少女が同じ道を歩いているのが見えた。村の中では、今までに見たことのない少女であった。少女は時々立ち止まってはあたりを見回し、首をかしげていた。道がわからなくて困っている様子だった。ガブリエルはその少女に近づくと、声をかけた。
「娘さん、道がわからないのかい。よかったら、案内してあげようか。」
「ご親切感謝いたしますわ。」
 少女は優雅に一礼した。農民の娘らしい前掛け姿をしていたが、その話し方や物腰は、その外見にあまり似つかわしくないものであった。
「で、どこへ行こうとしてるんだい。」
「あの、ブライユさんというお宅にお伺いしようと…。」
「へえ? それなら、うちだよ。」
ガブリエルは目を丸くした。この美しい娘がいったいわが家に何の用があるのか見当もつかなかった。

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