漫画家との座談会 その39 牛になる

ほうし・すずな「皆様、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。」
すずな「第29話『借金を払う三つの方法』の掲載は1月4日からですので、今しばらくお待ちください。」
ほうし「え、これで新年のご挨拶はおしまい?」
すずな「と、いうと?」
ほうし「今回の座談会のお題、『牛になる』って? お正月三が日は食っちゃ寝を決め込もうっていうことなんじゃない?」
すずな「食べてからすぐ横になると牛になるって、小さい頃はよく言われたものだったね。」
ほうし「でも、こたつが眠気を誘うんだよね。」
すずな「まったく…、おっと、この『牛になる』はそういう話じゃなくって、夏目漱石の言葉なんだよ。」
ほうし「へえ?」
すずな「千葉ウシノヒロバの牛のように生きる――夏目漱石の言いたかったことっていう記事で見つけてね。いい話だから拡散しようと思って。ちょうど丑年だし。」
ほうし「なるほど。で、夏目漱石はなんで牛になりたがってるの? やっぱり食べた後すぐに寝たいから?」
すずな「ち・が・う。元の記事をちゃんと読んでごらん。」
ほうし「ねえねえ、そんなこと言わないで説明して。」
すずな「しかたないなあ。じゃあ、さわりの所だけ。漱石はまずこう言ってるんだよ。『牛になる事はどうしても必要です。われわれはとかく馬になりたがるが、牛にはなかなかなり切れないです。』って。そして、牛になるためには、焦らず、深く考え、根気強くありなさいと言ってる。」
ほうし「なるほど。漱石にとっての牛ってそういうイメージなんだね。たしかに、いいねえ。見習わないとって思うよ。」
すずな「ね。そうでしょ。それから、根気強さが大事で、火花には一瞬の記憶しか残らないとも言ってる。」
ほうし「たしかに。もてはやされてもその時だけで終わる作品って多いなあ。」
すずな「『牛は超然として押していくのです。』っていう言葉もかっこいい。常に大局を見て、しかも倦まずたゆまず。少し前後するけど、決して押す相手をこしらえてはならない、相手はいくらでも現れて私たちを悩ませるって言ってるのも、深いなあって思うよ。」
ほうし「なるほどねえ。」
すずな「この文章で漱石が言おうとしていることとは違うかもしれないけれど、私はこれを読んで、仮想の敵を想定して軍事なんかにお金を使うんじゃんなく、地道だけれど実際に毎年起こる水害や感染症に備えて治水や医療をもっとお金を使うべきだって思ったよ。」
ほうし「まったくその通りだね。ルイ14世にも読ませてやりたいよ。」
すずな「というわけで、長くなりましたが、2021年丑年のご挨拶、これにていったん締めとさせていただきます。」
ほうし「1月4日にお会いしましょう。」
この記事へのコメント
牛になる勇気というのは深いですね。私自身を振り返ってみれば、とにかく馬になろうとばかりしています。全てが牛の様では話が進まない面もあるのですが、それは馬も然り。時には牛になることの大切さを思い出し、勇気を出すことも必要ですね。
それでは、新年もよろしくお願いします。
明けましておめでとうございます。
牛については、鈍重とかあまりよろしくないイメージで語られることが多いのですが、この夏目漱石の言葉は、今の世の中では特に含蓄深く私たちの生き方の指針になるのではないかと思って、紹介してみました。
いつも気持ち玉をありがとうございます。今年もよろしくお願いいたします。