サクラサク読書案内(6)  灰原薬『応天の門』

 『応天の門』は、菅原道真(845-903)と在原業平(825-880)を中心とする平安時代を描いた作品です。この二人は歴史上ばかりでなく、古典の方面でもぜひ知っておきたい人物なので、この作品を取り上げました。
 私はこの二人が同時代人で、しかも在原業平が年上であることは、この漫画を読むまでは意識していませんでした。しかし、確かにその通りです。そして狭い京都の中ですから、少年時代の菅原道真と在原業平が知り合いであっても、不思議はありません。

 高校で習う古典の定番の一つ『伊勢物語』の主人公「男」は、在原業平がモデルだと言われています。業平はとても美男子で女性によくもてたそうで、この漫画でも彼の色恋沙汰がよくトラブルのネタになります。藤原高子との関係も、重要なモチーフになっています。
 一方、菅原道真といえば、藤原氏と対立して失脚し、太宰府に左遷しその地で没した人物として有名です。道真の死後、藤原氏に祟りをもたらしたとして祀られ、今日にも学問の神様として信仰されています。しかし、この漫画での道真は、そうした祟りだの何だのを否定する合理主義的な少年として描かれています。彼が今後、政治の世界にどう巻き込まれていくのか、はらはらしながら読んでいます。
 『応天の門』まだ連載途中ですが、題名の『応天の門』からして、おそらく応天門の変が描かれることになると思われます。応天門が放火されたこの事件はとても有名で、「伴大納言絵巻」にそのことが描かれています。
 この事件の重要人物である伴大納言は漫画の中ですでに登場しています。ただ、藤原氏も相当に悪辣なので、通説通りの展開になるのか、それとも通説とは異なる「真相」が描かれるのか、今からわくわくしています。
 ただ、応天門の変は866年のことで、道真は21歳になります。ずっと少年として描いている道真の21歳の姿が描かれるのかどうか? (『日出処の天子』が、青年の厩戸王子が遣隋使を構想しているところで終わっていることを思うと…。)

 先日大阪城公園の梅園を見に行ったら、梅の木に梅を詠んだ歌を書いた札がぶら下げられていました。

 東風(こち)吹かば 匂ひおこせよ 梅の花 主なしとて 春な忘れそ

 これは道真が太宰府に左遷される時に家の梅に別れを惜しんで詠んだ歌です。これには後日談があり、その梅がなんと太宰府の道真のところまで飛んでいったというのです。超常的な現象ですが、この漫画の道真ならどう考えるのかと想像してみるのも面白いものです。
 梅園には他にはこんな札もありました。

 勅なればいともかしこし 鶯の宿はと問はば いかが答へむ

これは村上天皇がある家の梅の木を掘り取っていったところ、そこの女主人(紀貫之の娘)が差し出した歌です。
 「天皇の御命令なので畏れおおいことでございます。しかし、いつもこの木に来る鶯が自分の宿はどうしたのかと尋ねたらどう答えたらいいのでしょう」と、権力者の人も無げな振る舞いをみごとに批判している痛快な一首です。
応天の門 コミック1-7巻 セット

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 応天の門  コミック1-7巻 セット の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



応天の門 8 (BUNCH COMICS)
新潮社
2017-12-09
灰原 薬

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 応天の門 8 (BUNCH COMICS) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック