サクラサク読書案内(5) 山岸涼子『日出処の天子』

 日本の古代史を描いた漫画が近年多く見られるようになりましたが、その嚆矢としてはやはり山岸涼子の『日出処の天子』を挙げたいと思います。
 厩戸王子が超能力者という設定が特異ではありますが、これ自体は伝承をそのまま漫画化したものとして有りだと思います。
 歴史ものとして評価したいのは、蘇我氏が必ずしも一方的な「悪者」として描かれていない点です。
 これまでの歴史では、蘇我氏は天皇をないがしろにして権勢をふるい、挙げ句の果てには崇峻天皇を殺害したために、大化の改新で中大兄皇子と中臣鎌足によって倒されたということになっていました。
 しかし、この漫画では、そのような単純な構図で描いてはいません。
 たしかに蘇我馬子は多くの人から恐れられている権力者です。しかし、その人間的魅力もまた十分に描かれています。そして、ひとりの人間としての厩戸王子の最大の理解者が蘇我毛人であるとするならば、政治家としての厩戸王子の最大の理解者は蘇我馬子なのです。馬子は厩戸王子と共に物部氏を倒し、さらには崇峻天皇の暗殺も協力しておこないます。しかし、その後、厩戸王子が自らは即位せず、摂政となった時の真の意味を理解したのは馬子ただ一人でした。
 古代の社会制度が個性的な登場人物を通じて描かれている点も興味深いものです。淡水や調子麻呂など一癖も二癖もある渡来人たちの活躍ぶりも注目点です。また、同母兄妹は結婚できないが、異母兄妹は結婚できるというこの時代の結婚のあり方も、ストーリーの中で重要な役割を果たしています。

 同じ作者による『青青の時代(あおのじだい)』も面白い作品です。魏志倭人伝と古事記から題材を得て独自の物語を描いています。
 この作品で最も興味深いのは、先祖代々葬儀を司る一族である「クロヲトコ」の存在です。必要とされる職業でありながら「クロヲトコ」は人々に忌み嫌われています。そんな「クロヲトコ」の青年は、主人公の少女と親しくなり、数奇な運命をたどることになります。今も残る差別・偏見の問題をじっくりと考えさせられます。
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