「スペインかぜ」──もう一つの第一次世界大戦

 第一次世界大戦の末期、1918年から1919年にかけて、「スペインかぜ」と呼ばれた病気が全世界で猛威をふるい、まさに「パンデミック」という事態になりました。
 この病気は今ではインフルエンザであったことがわかっています。
 最初は米国で流行していたのが、米国の第一世界大戦への参戦でヨーロッパに伝わり、それから世界中に広がりました。
 米国発なのに、なぜ「スペインかぜ」と呼ばれたのかといえば、この当時世界大戦の真っ最中であったため、各国で情報が秘匿されていました。しかし、スペインは参戦していなかったために、この病気の情報もスペインから発せられ、それで「スペインかぜ」と呼ばれるようになったのでした。スペインにしてみればとんだ濡れ衣です。

 世界大戦という状況は、この病気についての正確な統計を示すことを著しく困難にしました。患者数については世界の全人口の30%から50%ともいわれ、死亡者は2,000万人以上、3,000万人、4,000万人とも言われています。いずれにせよ、これは第一次世界大戦での死者数を遙かに上回るものです。

 「スペインかぜ」がこれほど猖獗を極めたのは、病原体自体の毒性の強さももちろんですが、やはり戦争が悪影響を及ぼしたのは間違いありません。
 まずは情報が隠されていたこと、国境を越えて人が行き交ったこと、様々な地域から集まった人々が軍隊という過酷な集団生活をさせられていたこと、そして何よりも人々の生活を破壊し、荒廃させていたことです。第一次世界大戦は「総力戦」でした。直接戦闘に参加しない民間人であっても、軍事優先の政策の影響をもろに受けることになります。

 震災の後、直接地震の被害にあわなくとも、インフラの切断などで本来なら受けられたはずの適切な治療を受けられずに人が亡くなった場合、それは「震災関連死」と認識されます。
 そういう意味では「スペインかぜ」での死者の多くは、「戦争関連死」と言えるのではないでしょうか。

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