第59話 真理との邂逅-1

 これまでのあらすじ
 1685年、フランスの絶対君主ルイ十四世は、信教の自由を定めたナントの勅令を廃止し、カトリック以外の宗教を禁じた。迫害に耐えかねたユグノーによって「カミザールの乱」が引き起こされ、南フランスのセヴェンヌは2年にわたり反乱軍の影響下にあった。しかし、ヴィラール元帥の登場でカミザールはほぼ壊滅状態に追い込まれた。
 しかし、コンスタンスの塔に捕まっていたマゼルは仲間とともに脱走を開始する。彼らを乗せた偽装荷馬車は、夜番の兵士たちの警戒をかいくぐって自由への道をひた走ることに成功したように見えたが…。


 マゼルたちを乗せた荷馬車は順調に走り続けた。しかし、後ろから馬の足音が迫ってきた。ディマンシュは馬に鞭を当て速力を上げた。しかし、まもなく堂々たる体躯の馬に乗った将校が荷馬車を追い越し、その前に立ちふさがった。
「その荷馬車止まれ!」
 荷馬車の馬がたとえその馬と同じ能力を持っていたとしても、重い荷車を引いている以上速力で太刀打ちはできなかった。荷馬車はその命令に従って停止せざるを得なかった。
「あら、何でしょう。」
 ディマンシュは頭巾を深くかぶり直しながら言った。
 将校は馬から下りると御者席まで近付いてきた。
「君の顔をよく見せてくれたまえ。」
 そう言って彼は頭巾に手をかけようとしたが、ディマンシュはそうはされまいと機敏に身体をかわした。
「怖がらないで。ぼくは君が誰だか知りたいだけなんだ。」
 将校は穏やかな口調で言った。
「…でも、もうわかったよ。その身のこなし…。あの時と同じだ。覚えていないかい? ぼくははっきりと覚えている。あの時の出会いからずっと忘れられなかった。あれから、どんな貴婦人に出会っても心ときめかすことはなかった。君に比べたら美しさも機知も比べものにならない。」
将校の口調にはしだいに情熱がこもってきた。しかし、相手は沈黙したままであった。
「覚えていないとは言わせない。あのけしからんダンドリオン伯爵の結婚式を阻止するために一緒になって一芝居打ったじゃないか。ぼくはあの時に結婚させられそうになった花嫁の兄、アドルフ・ド・ルールだ。君はミレイユ…、ミレイユだろう。」

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

2012年01月01日 22:51
ここでルール登場。かなり良くない展開です!
2012年01月01日 23:51
アドルフ・・・だと・・・!?
やばい・・・か?
2012年01月02日 10:01
ブラックホークさん、たいへんなことになってきました。彼は任務からではなく、ある種、私用で追いかけてきたのですが…。
2012年01月02日 10:03
アッキーさん、これまでは女装で人の油断を誘い、兵士たちの警戒をくぐり抜けてきたのですが、この場合はかえってあだになりました。(といっても、もちろん素顔ではもっとまずいことになっていたのではありますが。)

この記事へのトラックバック