第49話 黒幕-1

これまでのあらすじ
 第一部
 1685年、フランスの絶対君主ルイ十四世は、信教の自由を定めたナントの勅令を廃止し、カトリック以外の宗教を禁じた。これまで共存していたユグノー(カルヴァン派のプロテスタント)とカトリックの人々との間には、深い対立が生じることになった。多くのユグノーがフランスから亡命し、あるいはカトリックに改宗していったが、南フランスのセヴェンヌには、心の底から改宗したのではない人々が数多く存在していた。
 ユグノーの青年ディマンシュ・ブライユは、母親がカトリックに改宗したことに幻滅を感じ、伯父のオーギュストのところへ旅立った。しかしながら、オーギュストはすでに亡くなっており、その代わり伯父の妻とガブリエル(ガブ)とその息子で12才の誕生日を迎えたばかりのアルベール(アル)と暮らすことになった。
 ディマンシュはアルと共に、オーギュストが生前に翻訳出版しようとしていた『自由の法』を探し求める中で、読書好きのカトリックの貴族の少女シャルロットと出会う。シャルロットはディマンシュに恋をしてしまい、一方アルもシャルロットに恋をする。
 そんなさなか秘密の礼拝を行なっていたユグノーの説教者が逮捕されるという事件が起こる。説教者を釈放させるための手段として、ディマンシュたちは相手側の兵士(シャルロットの兄アドルフ)を人質に取る。しかし、説教者の処刑は執行され、ディマンシュは無力感に苛まれる。しかし、ある日彼は“天使の啓示”を受け、ジュネーヴで学問を学びなおすことを決意する。そして、ガブリエルとアル、そしてシャルロットに別れを告げて旅立っていった。


 第二部
 ディマンシュはジュネーヴに行く途中ジャン・マシップというユグノーの不法入出国を援助することを業としている男に出会う。
 ジュネーヴ学院でディマンシュは自分の名前が禁じられていることを知り、いくつもの不愉快な目に遭う。しかし、教師や学生の中でも、ガトー師やポワーヴル、シブレットといった彼の理解者との出会いもあった。
 第一部の終わりから三年後、成長したアルはシャルロットと再会する。シャルロットは兄の知り合いのダンドリオン伯爵に求婚され、気に染まぬ結婚を強いられようとしていた。再会した二人の間に新しい恋が芽生える。しかし、シャルロットは、伯爵と結婚すればナントの勅令を復活させるよう王に進言するという約束を信じてしまう。絶望したアルの前にジュネーヴからディマンシュが駆けつけ、伯爵の不実をあばき、二人をひそかに結婚させる。
 しかし、シャルロットの父親ルール氏は紆余曲折の末娘の居所を発見し、二人を引き裂く。ただし、ルール氏は、自分の息子アドルフとラテン語で議論して勝てばアルを婿として認めると約束する。
 屋敷に連れ戻されたシャルロットは、アルの子どもを妊娠しており、村の老夫婦リュックとリザベットの協力で、無事、アントワーヌを出産する。
 

 第三部
 アルはルール氏の出した条件に応えようと、働きながら懸命にラテン語を学習する。そんな中、ジャン・カヴァリエ、ピエール・ラポルト(ロラン)、アブラアム・マゼルの三人の若者と出会う。気の弱いジャンに対してアルは保護者のように振舞うが、後の二人とは最初は対立する。やがて全員が和解し、彼らとジェデオン・ラポルト、ピエール・セギエらがいっしょになって、ジュネーヴから説教者を呼び寄せようという運動を行う。
 この運動に応えて、ジュネーヴ学院からはポワーヴルが説教者としてセヴェンヌに派遣される。ポワーヴルの働きによって、ロランは貴族の娘マルトと結ばれ、アルはラテン語の実力を上達させる。そんなポワーヴルに少女マリエットが恋をする。
 ユグノーを監視し罰を与える役目のシェーラ司祭は、説教者の動きを突き止め、ついにポワーヴルを罠にかける。
 ポワーヴルを失ったセヴェンヌの人々は、自分たちの信仰の自由を回復するために、セギエらを中心に、荒野で預言者運動を行う。ジャン・カヴァリエもそうした預言者の一人であったが、弾圧を逃れるためにひとまずジュネーヴに逃れる。彼はそこでディマンシュと出会い、彼の新しい戦略と共にフランスに戻ってくる。
 同じ時期、アルはついにアドルフに勝負を挑み、見事に勝利を収めた。喜びに浮き立つアルの前に、一人の使者が現れた。


第四部 
 使者が告げたのはセヴェンヌにユグノーが反乱を起こしたという事実であった。弾圧の手先となっていたシェーラ司祭に対してついに怒りが爆発したのであった。この事件によってアルは再びシャルロットから引き離され、失意のどん底に陥る。
 ジュネーヴから戻ってきたディマンシュとジャン・カヴァリエは自分の計画を捨ててその反乱に参加する。
 反乱部隊はその中心人物セギエを失うが、ラポルトによって再び立て直される。そのラポルトもまたプール隊長によって殺されるが、ジャンが新たな中心となる。そこに失意から立ち直ったアルも加わる。
 反乱軍は「カミザール」と呼ばれるようになる。
 ジャンが病気になり、ロランが変わって指揮を執るが敗北を喫し、彼自身も重傷を負う。しかし、ユグノーの貴族サルガ男爵に救われる。カミザールの一員カスタネがサルガ男爵を説得し、男爵を仲間に引き入れる。
 アブラアム・マゼルはリヴェール神父との出会いによって反乱に疑問を持つようになるが、モントルヴェル元帥の非武装の女性たちへの虐殺計画を目の当たりにして再び戦闘に戻る。
 シャルロットはこの反乱を終わらせるために知事に迫害をやめるよう手紙を出すが無視される。
 ポワーヴルを愛していたマリエットは美しい娘に成長し、何人もの男が彼女に惚れ込むが、彼女自身はあくまでポワーヴルを愛し続け、そして国王軍の襲撃によって殺される。
 


 目的地に向かって懸命に歩いていたはずなのに、いつの間にか見知らぬ場所に出てしまった。道を尋ねようにも、行き交う人は皆顔を伏せて足早に通り過ぎていく。勇気を出して声をかけてみたが、何も聞こえなかったように無表情のまま過ぎ去っていゆく。存在していない者のように扱われていると、目的地がどこであったのか、自分がどこへ行こうとしていたのかもわからなくなってくる。やがて夜の帳(とばり)があたりを包み、見知らぬ場所は真の闇へと変貌してゆく。そこで初めて自分がどこへ行こうとしていたのかを思い出す。愛する者のところへ行こうとしていたのだ。愛する者の名を呼ぼうとした時に、目の前に一人の女性が現れる。
「誰の名を呼ぼうとしているのかしら。」
「それはもちろん…。」
 その続きを答えようとして答えられない自分がいるのに気がつく。女性はなおも言う。
「何もかもあなたが元凶なのよ。」
「そんな! 違うわ!」
「いいえ、そうなのよ。」
 女性の姿は鏡に映った自分であった。

「お母さま! どうしたの。」
 アントワーヌの声でシャルロットは目覚めた。

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この記事へのコメント

2011年01月01日 18:32
明けましておめでとうございます!
今年もよろしくお願い申し上げます。

久々登場。ヒロインのシャルロット。苦悩にあえぐ若い母。ある意味、自由のないこの時代ならではの悩みでもある。
2011年01月01日 23:13
あけましておめでとうございます!
新年早々から(お互いに)小説が暗い展開ですね。
黒幕・・・というと、アルとシャルロットを引き裂いた黒幕はルール氏ですが・・。黒幕という表現が合っているのかどうか。
やはり展開を待ちましょう。

それでは、今年もよろしくお願いします。
2011年01月02日 11:23
ブラックホークさん、あけましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いいたします。

この小説の二大ヒロインの一人シャルロットの登場で第五部を始めていきます。彼女の苦悩はまだまだこれから…。(Sずな)
2011年01月02日 11:28
アッキーさん、あけましておめでとうございます!
そうですね。アッキーさんの小説も暗そうですね。「最後の春」はとりあえず幸福な結末(千里に近しい人々に大きな難がなかったという点で)でしたが、これからがたいへんそう…。
「黒幕」というのは、複合的な意味合いを持たしています。誰が誰にとって、何の黒幕なのか、視点を変えれば全然違ってくるということもあります。

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