第48話 約束-2

 収容所所長カユザックは、かつてリヴェールがブルターニュで軍務についていた時の部下であった。
「閣下がこんなところへお出ましとは…。」
「私は聖職者だ。そのような呼び方をされたくはない。」
「では、猊下。」
 カユザックは恭しく言った。
「私を司教かなにかだと思っているのか。私は一介の司祭に過ぎない。神父と呼べばそれでいい。」
「は、はあ…。」
 リヴェールは軍務を退いて聖職者になった時、誰にもその理由を明らかにしなかったので、部下たちの間ではうまみのある司教職を得たのだというのがもっぱらの噂であった。
「…では、神父殿、この収容所の囚人たちを悔い改めさせたいというお話ですが、ここにいる連中はとてもとても…。」
 収容所所長の言葉を神父は遮った。
「私が悔い改めさせる? 悔い改めさせることができるのは神だけだ。ただ、すでに悔い改めようとしている者がいればその者を導くことはできると言ったのだ。」
 リヴェールの言葉に対してカユザックは思った。
『どちらでも同じではないか…。いやいや、こういう細かいところにこだわるのがリヴェール殿だったな。神父になってもその性格は変わらないとみえる。』
「さっそく囚人たちの様子を見せてもらおう。」
「はっ。」
『こういう単刀直入なところも変わっていない。』
 彼は囚人たちの房に神父を案内しながら自分に言い聞かせていた。
『…おれは何をびくびくしているのだ。今のリヴェール殿は上司ではない。たいした権力もない下級の聖職者ではないか…。』

画像この男、実はカユザックという名前があったのです。→
リヴェールがどんな上司であったか、詳しくは漫画『聖夜』をごらんください。
聖夜-2

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この記事へのコメント

2010年05月02日 21:33
なるほど、この時代のリヴェール神父を知っていれば、恐れるのも無理はありませんね。しかしそのことが目的を果たすのに有効にはたらくとは皮肉なものです。
2010年05月03日 08:41
アッキーさん、この時代のリヴェール神父はまさに冷酷非情の男でした。聖夜の出来事によって大きな変貌を遂げたとはいえ、長年培った雰囲気や性格はあまり変わらなかったりします。

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