第46話 春を呼ぶ女たち-1

これまでのあらすじ
 1702年にセヴェンヌで信教の自由の回復を求めて反乱を起こしたユグノーは「カミザール」と名乗るようになり、セヴェンヌで地歩を拡大していった。これを鎮圧しようとする国王軍との戦闘で両者とも多大な犠牲を出し、また戦闘の過程で心を蝕まれていく者も生じた。
 ユグノー側ではディマンシュが病に倒れ、マゼルが引きこもり、カトリック側ではアドルフが重傷を負い見知らぬ女性の介護を受けている。

 寒風吹きすさぶセヴェンヌの山々にも太陽が顔を出す時間が日一日と長くなり、春の訪れを誰もが感じられるようになってきた。
 重傷を負ってどこの誰とも知らぬ女に助けられたアドルフは、傷が癒えるにつれて一日も早くこの家から脱出しなければならないという思いを強めていった。なにしろこの女はユグノーなのである。何を思ってか今のところ自分の世話を焼いてくれているものの、いつ心変わりして寝首をかかれないとも限らないのだ。
 しかし、今のアドルフには軍服もなければ長靴もなく、さらにマントも剣もなかった。いかにも病人じみた情けない下着姿ではこの家から出るに出られなかった。一方、女は家を留守にすることが多くなった。時には朝から出かけて暗くなるまで帰ってこないこともあった。そんな時には、彼の寝台の横に食事を置いていくのでそれとわかるのであった。
 身体が少しは動くようになるとアドルフは女が昼食を置いていった日に家探しをすることにした。彼が寝かされていたのは寝台と棚がひとつずつ置かれているだけの殺風景な部屋であった。棚には丈夫な綿の作業着の上下と幾組かの下着や靴下がきちんとたたんで置かれてあった。棚の上には色々な布地の切れ端が何枚かあった。寝台の下までのぞいてみたが、彼の求めている物はなかった。

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