年末の読書案内 沢里尊『魔』

 さて、今年の読書案内の最後を飾るのは、いつも鋭いコメントをしてくださることでこのブログの読者の皆様にもおなじみの沢里尊(さわさとたかし)さんの小説です。

 沢里さんの作品は、時代物、現代物、SFとバラエティーに富み、どれもスリルとユーモアに満ち、人を励ますメッセージが込められています。その代表作は、ここで紹介する『魔』という作品です。

 主人公は漫画家志望の若いOL美奈子。彼女は人間を不幸にすることを目的とする魔界の王ゴリーゴーに目をつけられてしまいます。魔王は言います。「たまにいるのだ。とんでもない人間が。自分の幸福だけを追い求めていればいいものを、自他共の幸福を願い、さらには社会を変え、世界までも変えようという大理想に生きんとするふとどき者が!」
 今の美奈子はまだそんな使命を自覚していません。しかし、その自覚の間際にいることを魔界のコンピューターはキャッチしてしまいました。 
 魔王は彼女が目覚めるのを徹底的に邪魔していきます。魔王のやり口はなかなか巧妙で、「信頼している身近な人間の身に入り、心外な言葉を浴びせれば、大関クラスの強い人間でもやる気をなくす」というものです。
 しかしながら、魔王にも天敵とも言うべき相手がいます。それが「鬼神」こと使命を自覚しようとする人間を守ろうとする守護神です。
 魔王は何人もの部下――コンピュータを駆使してターゲットの状態を観察するブルーサンダーやお調子者の新米ゴリーレッド――を使って、美奈子のやる気を削ごうとします。しかし、ゴリーレッドは新米なのであまり役に立ちそうにありません。魔の使命を忘れているのか人間に同情的で、魔王と掛け合い漫才のような話ばかりしています。
 「鬼神」が美奈子を助けてくれるとは限りません。魔王の言葉によれば「鬼神は強い者しか守らない薄情な奴なのだ」ということですから。鬼神は元々魔の仲間だったので「弱い心の持ち主は見捨てて、強い心を持った勇者だけを守る」という存在なのです。「苦難にぶつかったときに嘆きの言葉を吐いたり、いじけたりすれば、近くにいた鬼神は偽物の戦士と見なし、去る」ということになってしまいます。
 「魔」の働きでやることなすことうまくいかなくなってしまう美奈子。しかし、そんな彼女の前に不思議な男性が…。彼は魔王たちが恐れる「鬼神」なのでしょうか。

 魔王とゴリーレッドとの愉快な掛け合い。生真面目なのに時々ずっこけるブルーサンダー。夢はあってもお金のない若者が陥りがちな罠に次々と引っかかってしまう美奈子。意外に渋い役回りの父親。美奈子ははたして試練を乗り越えて夢を実現させることができるのでしょうか。そして、謎の男性の正体は?
 ユーモアとスリルに満ちた展開に、携帯電話の次の画面を見るのももどかしい思いになることでしょう。

*この小説は、「野いちご」という携帯小説のサイトに掲載されており、携帯電話でもパソコンでも読めるようになっています。
*沢里さんのエッセイブログ「夢を叶える ブログ教習所」も必見!

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この記事へのコメント

沢里尊
2010年01月01日 11:35
迎春!
今年もよろしくお願い申し上げます。
驚きました。
まさかまさか。
凄く嬉しいです。ありがとうございます。
新年早々思いがけない良いことがあるとは!
2010年は大躍進の年に!

日は昇り
光が街を
照らしゆく
時は今こそ
文学革命
2010年01月01日 21:18
謹賀新年!
こちらこそよろしくお願いいたします。
わくわくするような歌ですね。
では返歌を。

言葉こそ
闘いの武器
友と我
人生懸ける
文学革命

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