第37話 ポン・ド・モンヴェール-1

これまでのあらすじ
第一部
  1685年、フランスの絶対君主ルイ十四世は、信教の自由を定めたナントの勅令を廃止し、カトリック以外の宗教を禁じた。これまで共存していたユグノー(カルヴァン派のプロテスタント)とカトリックの人々との間には、深い対立が生じることになった。多くのユグノーがフランスから亡命し、あるいはカトリックに改宗していったが、南フランスのセヴェンヌには、心の底から改宗したのではない人々が数多く存在していた。
 ユグノーの青年ディマンシュ・ブライユは、母親がカトリックに改宗したことに幻滅を感じ、伯父のオーギュストのところへ旅立った。しかしながら、オーギュストはすでに亡くなっており、その代わり伯父の妻ガブリエル(ガブ)とその息子で12才の誕生日を迎えたばかりのアルベール(アル)と暮らすことになった。
 ディマンシュはアルと共に、オーギュストが生前に翻訳出版しようとしていた『自由の法』を探し求める中で、読書好きのカトリックの貴族の少女シャルロットと出会う。シャルロットはディマンシュに恋をしてしまい、一方アルもシャルロットに恋をする。
 そんなさなか秘密の礼拝を行なっていたユグノーの説教者が逮捕されるという事件が起こる。説教者を釈放させるための手段として、ディマンシュたちは相手側の兵士(シャルロットの兄アドルフ)を人質に取る。しかし、説教者の処刑は執行され、ディマンシュは無力感に苛まれる。しかし、ある日彼は“天使の啓示”を受け、ジュネーヴで学問を学びなおすことを決意する。そして、ガブリエルとアル、そしてシャルロットに別れを告げて旅立っていった。

 第二部
 ディマンシュはジュネーヴに行く途中ジャン・マシップというユグノーの不法入出国を援助することを業としている男に出会う。
 ジュネーヴ学院でディマンシュは自分の名前が禁じられていることを知り、いくつもの不愉快な目に遭う。しかし、教師や学生の中でも、ガトー師やポワーヴル、シブレットといった彼の理解者との出会いもあった。
 ディマンシュがジュネーヴに旅立ってから三年後、成長したアルはシャルロットと再会する。シャルロットは兄の知り合いのダンドリオン伯爵に求婚され、意に染まぬ結婚を強いられようとしていた。再会した二人の間に新しい恋が芽生える。しかし、シャルロットは、伯爵と結婚すればナントの勅令を復活させるよう王に進言するという約束を信じてしまう。絶望したアルの前にジュネーヴからディマンシュが駆けつけ、伯爵の不実をあばき、二人をひそかに結婚させる。
 しかし、シャルロットの父親ルール氏は紆余曲折の末、娘の居所を発見し、二人を引き裂く。ただし、ルール氏は、自分の息子アドルフとラテン語で議論して勝てばアルを婿として認めると約束する。
 屋敷に連れ戻されたシャルロットは、アルの子どもを妊娠しており、村の老夫婦リュックとリザベットの協力で、無事、アントワーヌを出産する。
 
第三部
 アルはルール氏の出した条件に応えようと、働きながら懸命にラテン語を学習する。そんな中、ジャン・カヴァリエ、ピエール・ラポルト(ロラン)、アブラアム・マゼルの三人の若者と出会う。気の弱いジャンに対してアルは保護者のように振舞うが、後の二人とは最初は対立する。やがて全員が和解し、彼らとジェデオン・ラポルト、ピエール・セギエらがいっしょになって、ジュネーヴから説教者を呼び寄せようという運動を行う。
 この運動に応えて、ジュネーヴ学院からはポワーヴルが説教者としてセヴェンヌに派遣される。ポワーヴルの働きによって、ロランは貴族の娘マルトと結ばれ、アルはラテン語の実力を上達させる。そんなポワーヴルに少女マリエットが恋をする。
 ユグノーを監視し罰を与える役目のシェーラ司祭は、説教者の動きを突き止め、ついにポワーヴルを罠にかける。
 ポワーヴルを失ったセヴェンヌの人々は、自分たちの信仰の自由を回復するために、セギエらを中心に、荒野で預言者運動を行う。ジャン・カヴァリエもそうした預言者の一人であったが、弾圧を逃れるためにひとまずジュネーヴに逃れる。彼はそこでディマンシュと出会い、彼の新しい戦略と共にフランスに戻ってくる。
 同じ時期、アルはついにアドルフに勝負を挑み、見事に勝利を収めた。喜びに浮き立つアルの前に、一人の使者が現れた。

「プール隊長の部隊に所属する者は全員、即刻、完全武装して集合し、ポン・ド・モンヴェールで発生したユグノーの反乱の鎮圧に当たるべし。」
 ルール家を訪問した使者の言葉は、屋敷の人々に衝撃をもたらした。一七〇二年七月二十七日、夕刻のことであった。
 この知らせを最も自然に受け止めたのはアドルフであった。ハプスブルク家の軍隊との戦闘に赴こうとしていた彼にとっては、立ち向かうべき相手が変わっただけのことであった。
『ユグノーの連中め、とうとうやらかしたようだな。しかし、これでついにあの連中を一網打尽にできるというものだ。』
「わかりました。このアドルフ・ド・ルール、プール隊長の下にすぐさま馳せ参じましょう。」
 アドルフが応じると、使者はさらに付け加えた。
「ヴァルローグで演習をしていたプール隊長はすでにポン・ド・モンヴェールに向かって出発しております。合流できるよう、お急ぎ下さい。さらに、プール隊長からは、家人や従僕の中から信頼の置ける屈強な若者を選び、民兵に志願させるようにとのご命令も出ております。」
 使者はそう言ってアルの方に視線をやった。
 しかし、アルは呆然と立ちつくしていた。
『ユグノーが反乱? いったい何が?』

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この記事へのコメント

沢里尊
2009年06月01日 14:41
せっかく掴んだと思った幸せが・・・。
王が統治する国、あるいは時代に生まれると、本当に自由がないですね。かくゆう日本も権力者有利の国ですが。民衆が強く、賢くなるということは、最大の防御であり、市民の幸福を守る道ですね。
2009年06月02日 08:30
沢里さん、せっかくあれほどの努力をして達成したのにねえ…。(作者はひどすぎます。)
これまではセヴェンヌでどれほど自由が押さえつけられてきたのかを描いてきましたが、とうとうその反発が今までにない形で生じたようです。そんな中でアルは自分の幸せをつかむことができるのでしょうか。

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