第31話 迷える子羊たち-1

これまでのあらすじ
 1685年、フランスの絶対君主ルイ十四世は、信教の自由を定めたナントの勅令を廃止し、カトリック以外の宗教を禁じた。これまで共存していたユグノー(カルヴァン派のプロテスタント)とカトリックの人々との間には、深い対立が生じることになった。多くのユグノーがフランスから亡命し、あるいはカトリックに改宗していったが、南フランスのセヴェンヌには、心の底から改宗したのではない人々が数多く存在していた。
 セヴェンヌの人々はカルヴァン派の本拠地ジュネーヴから説教者を招聘するという計画を実施に移すことに成功した。招かれた説教者ポワーヴルは期待に違わぬ説教をおこない、みなの心を一つにした。しかしながら、その計画に携わっていたユグノーの青年アルは、ジュネーヴから来るのは自分の従兄ディマンシュだと思いこんでいたために、ひとり期待を裏切られた気持ちになっていた。

『どうして…、どうしてディマンシュが来ないんだ。あの手紙じゃ、ディマンシュが来ると書いてあったじゃないか。』
 アルはディマンシュからの手紙をもう一度読めば、「まだはっきりと決まったわけではないので、ぬか喜びは禁物だ」という言葉が書いてあったことに気がつくはずであった。しかし、最初の印象が全てであった。それに、確かにその時点では、ディマンシュは再会をほぼ確信してその手紙を書いていたのである。アルはディマンシュがその手紙に込めた思いをそのまま受け取ったに過ぎなかった。
 アルは自分の疑問と不満とをぶつけようとして、新しい説教者の姿を探し求めた。しかし、確かに黒い衣を身にまとった人物が説教台から降りるのを目にし、それを追い求めてきたにもかかわらず、その姿はかき消すように群衆の中に溶け込んでしまった。

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