第30話 荒野の説教者-1

これまでのあらすじ
 1685年、フランスの絶対君主ルイ十四世は、信教の自由を定めたナントの勅令を廃止し、カトリック以外の宗教を禁じた。これまで共存していたユグノー(カルヴァン派のプロテスタント)とカトリックの人々との間には、深い対立が生じることになった。多くのユグノーがフランスから亡命し、あるいはカトリックに改宗していったが、南フランスのセヴェンヌには、心の底から改宗したのではない人々が数多く存在していた。
 人々は自分たちの信仰を守り抜くために様々な試みをおこなっていた。そのうちの一つに、ジュネーヴから説教者を招こうとする計画があった。その計画に携わっているユグノーの青年アルは、かつてジュネーヴ学院へと旅だった従兄のディマンシュが説教者となって戻ってくることを期待していた。

 説教者招聘(しょうへい)計画は着々と進んでいたが、実のところ、その全容を把握している者はごくわずかしかいなかった。それは秘密を守るための方途であった。万が一捕らえられ、拷問によって自白させられるようなことがあったとしても、知らないことは知らないとしか答えられないからであった。平民たちを束ねる役割を果たしているジェデオン・ラポルトですら貴族の関係者はほとんど知らず、貴族の中で有力な役割を果たしているコルネリー家の主人は、セギエ以外の平民と直接顔を合わせることはなかった。
 セギエは物乞いとして、まったく怪しまれずに、あちらこちらを放浪し、貴族の屋敷にも平民の家にも出入りすることができた。したがって自ずとセギエがこの計画の要(かなめ)をなす人物となっていた。
 それ以外の協力者は、自分の近しい人々以外は、互いに誰が仲間であるのかも、この計画がどこまで具体化しているのかも知らされていなかった。
 アルもまた、いったいいつどんな人物がジュネーヴからやって来ることになっているのか全くわからなかった。しかし、アルは思いがけないところから、その一端を知ることができた。それをアルに知らせたのはジュネーヴからのディマンシュの手紙であった。

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この記事へのコメント

ヒッピー
2008年05月01日 09:30
「貴族の中で有力な役割を果たしているコルネリー家」、なぁーるほど。
そうだとは思っていましたが、これで前話とのつながりがはっきりしました。
2008年05月02日 11:33
ヒッピーさん、そうなんです。だからコルネリー家の人々について詳しく書いてきたのです。
ロランたちとコルネリー家との間にはこの計画を通じてのつながりがあるのですが、今のところ両者ともそれを具体的に認識してはいません。

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