第27話 ロラン、またはオルランド-1

これまでのあらすじ
 1685年、フランスの絶対君主ルイ十四世は、信教の自由を定めたナントの勅令を廃止し、カトリック以外の宗教を禁じた。これまで共存していたユグノー(カルヴァン派のプロテスタント)とカトリックの人々との間には、深い対立が生じることになった。多くのユグノーがフランスから亡命し、あるいはカトリックに改宗していったが、南フランスのセヴェンヌには、心の底から改宗したのではない人々が数多く存在していた。

 ユグノーの青年アルベール(アル)は、従兄のディマンシュの援助によって、宗旨と身分の違いを乗り越えて、カトリックの貴族の娘シャルロットと結婚するが、彼女の父親によって引き離される。ただし、彼女の兄アドルフとラテン語で議論して勝てば婿として認めると約束を信じてラテン語の勉学に励む。

 アルはラコンブの農場で働くことで、辞書や書籍を購入する資金を稼ごうとする。そこで知り合った少年ジャン・カヴァリエとは親しくなるが、ジャンは農場を離れてパン屋の徒弟となってしまう。農場で働き続けるアルは、同じ仕事場で働くマゼルと険悪な関係になり、さらには、ロランと名乗る青年が短剣を持ち出して喧嘩を売ってきた。


 ロランと呼ばれた若者は、本名をピエール・ラポルトという。彼は自分をシャルルマーニュ時代の英雄として名高い騎士ロランになぞらえ、人も彼をそう呼んだ。
 中世の武勲詩『ロランの歌』にはじまり、ルネッサンス時代のイタリアの『狂えるオルランド』に至るまで、「ロラン」の物語は世界中の詩人たちによって何度も焼きなおされ、歌い継がれてきた。多くの人々が「ロラン」の物語に惹かれ、彼をその圧倒的な強さとそれに伴う欠点もろとも愛し憧れた。
 ピエール・ラポルトもまたそのような者の一人であった。さらに付け加えるなら、彼の愛した物語は、『ロランの歌』ではなく、むしろ『狂えるオルランド』の方であった。そのことは、二十一世紀の今も現存している彼の手紙の署名に「狂えるロラン」と書かれていることによって確認できる。あえなく戦死してしまう武勲詩の主人公よりも、たとえ傍目からはこっけいに見えるぐらい悲惨な目にあおうともしぶとく生き続ける人物の方に魅力を感じていたのであろう。彼はどんな困難にあっても死を選ぶことはせず、あくまでも生きることを求め続けた人物であった。

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この記事へのコメント

沙綾夏
2008年02月06日 18:57
>あえなく戦死してしまう武勲詩の主人公よりも、たとえ傍目からはこっけいに見えるぐらい悲惨な目にあおうともしぶとく生き続ける人物の方に魅力を感じていたのであろう

そういうロランに魅力を感じます。
2008年02月07日 12:23
沙綾夏さん、ロランへの応援ありがとうございます。ロランは今のところ、危ない不良少年といった感じに描かれていますが、これから彼の魅力を描いていきますので、よろしくお願いいたします。

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