第24話 絆-1

これまでのあらすじ
 1685年、フランスの絶対君主ルイ十四世は、信教の自由を定めたナントの勅令を廃止し、カトリック以外の宗教を禁じた。これまで共存していたユグノー(プロテスタント)とカトリックの人々との間には、深い対立が生じることになった。
 カトリックの貴族の娘シャルロットは、様々な艱難を乗り越えて、愛し合っているユグノーの青年アルとついに結ばれる。一方、父親のルール氏は東奔西走の末、ついに二人の居所を発見する。


 五人の武装集団がやって来るのが目に入った時、アルは本能的に手にしていた鍬で防御の態勢をとった。その集団はアルから少し離れたところで立ち止まった。そのうちのひとりが残りの四人に合図をしてから、馬から降り、こちらに向かって歩いてきた。アルは緊張の度合いを高め、鍬を握り締めた。
「おまえがアルベール・ブライユか。」
 その人物は低く重々しい声で言った。アルは実のところ心臓が張り裂けそうに脈打つのを感じたが、それを気取られまいと声を張り上げて言った。
「そうだ!」
 それを聞くと、剣を腰に佩(は)いた人物はさらに一歩近づいて言った。
「わしが誰だかわかるか。」
 アルはそれがルール氏であることはすぐにわかった。三年前に修道士見習いに変装してディマンシュとともにルール家を訪れた時には笑顔で歓待してくれた人物が、今は表情を消してアルの前に立ちあわられたのである。
「シャルロットの親父さんだね。」
「そんななれなれしい呼び方はよしてもらおう。」
 ルール氏は表情を変えずに言った。

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この記事へのコメント

2007年11月01日 22:41
急展開ですね。まあ、ルール氏でなくても、「シャルロットの親父さんだね」と言われたら、馴れ馴れしく感じると思いますが。アルもそれくらい高ぶっているのでしょうか。
どうするアル。シャルロットの兄が出て来たら命はない。いや、父も怖い。
ヒッピー
2007年11月01日 23:35
ピーンと張りつめた緊迫の場面ですね。
アルがどんな姿勢をとるかということははっきりしていると思いますが、ルール氏がどう出るかが、これまでの叙述からは推測しがたいので、ハラハラドキドキですね。
2007年11月02日 09:35
沢里さん、アルはルール氏に対しては特にこれまで個人的な敵意を感じていませんでした。以前歓待してくれた思い出やシャルロットの父親であることで、むしろ親しみを感じていました。それを完全に吹き飛ばすルール氏の態度に、アルも父親から最愛の娘を奪うことがどんなことを意味するかを完全に悟りました。
2007年11月02日 09:42
ヒッピーさん、アルは単純明快ですが、ルール氏は武力と策略とを同時に駆使する一筋縄では行かない人物です。「手荒な真似はしない」という誓いはどこに行ってしまうのでしょうか。娘のことになると、目的のためなら手段は選ばないのでしょうか?

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