第23話 ルール氏の人脈-1

これまでのあらすじ
 1685年、フランスの絶対君主ルイ十四世は、信教の自由を定めたナントの勅令を廃止し、カトリック以外の宗教を禁じた。これまで共存していたユグノー(プロテスタント)とカトリックの人々との間には、深い対立が生じることになった。
 カトリックの貴族の娘シャルロットは、様々な艱難を乗り越えて、愛し合っているユグノーの青年アルとついに結ばれる。アルの従兄ディマンシュは、愛のない結婚をしようとしたシャルロットを救い出し、恋人たちを同士を結婚させるために大きな役割を果たした後、またジュネーヴ学院へと戻っていった。
 一方、結婚式の後、シャルロットの失踪に気が付いた兄のアドルフと父親は…。


 伯爵とシャルロットの結婚式が成立しなかったのは奇跡的なできごとであった。通常であれば決して一致し得ないと思われる様々な立場や意思が、偶然一つにまとまってこのような結果が生じた。しかし、偶然の役割が終わった後は、出番を待ち焦がれていた必然が大きな顔をしはじめた。その最初の現われは次のようなものであった。
『お父様、お兄様、わたしを探さないでください。わたしは偽りと汚辱に満ちたこの世に絶望しました。神様の真の御心を探し求めるために、わたしは修道の生活に入ります。シャルロット』
 シャルロットの置き手紙を見て、アドルフと父親は茫然としていた。
「ううむ。ここまで思いつめるとは…。やはり、夫となるべき者に何人もの愛人や隠し子がいたなどという話は、純情な娘には耐えがたいものであったのだろうな。」
 父親は、シャルロットの手紙を置き、ぽつりと言ったが、アドルフは父親をせかした。
「父上、こんなこところで、手をこまねいている場合ではありません。早くシャルロットを連れ戻しに行かなくては。」

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この記事へのコメント

沢里尊
2007年10月01日 20:36
あの偽りの結婚式のおかげで、この手紙が俄然生きてきます。しかし、だからこそ、このまま別れるはずもなく、「探さないで」と言われて本当に探さない兄はいないでしょう。
愛する妹の苦しみを知れば、一言謝りたいと思うのが人情。
ただでは済みそうもありませんね。
2007年10月02日 09:00
沢里さん、もちろん、アドルフも父親も必至になって探すのです。しかし、この手紙を読めば彼らはどこに行こうとするでしょうか。

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