第21話 結婚式(続き)-1

これまでのあらすじ
 1685年、フランスの絶対君主ルイ十四世は、信教の自由を定めたナントの勅令を廃止し、カトリック以外の宗教を禁じた。これまで共存していたユグノー(プロテスタント)とカトリックの人々との間には、深い対立が生じることになった。
 カトリックの貴族の少女シャルロットは、ユグノーの少年アルと心を通わせ、駆け落ちを決意するまでに至るが、ナントの勅令の復活を進言するというダンドリオン伯爵の言葉で、伯爵との結婚を決意する。事情を知らないアルはシャルロットが心変わりをしたと考え、絶望に打ちひしがれ、その思いを書いた手紙をジュネーヴの従兄ディマンシュに送る。その手紙を読んだディマンシュは女装して国境を越え、アルのもとに現れ、彼を叱咤激励する。アルはディマンシュとともにシャルロットの救出を決意するが、そのための有効な手だては、結婚式まであと一時間と迫った段階でも未だ見つからない…?


 アルとディマンシュは教会のすぐ近くにまでたどり着いた。その教会の正面玄関の前には、なにやら逡巡しているようすの子連れの女性がいた。一見みすぼらしい身なりに見えるが、着ている服は上等の布地でできていた。しかし、それはあまりにも着古されており、流行にも遅れていた。一昔前の貴族の婦人が着ていたものをその小間使いがちょうだいしたといった風情であった。子どもたちの服はさらに古びていたが、それぞれの丈に合うように丁寧な縫製がなされており、この女性の細やかな心づかいが現われていた。
 教会の中からは、下働きらしい男が出てきて、その女性に声をかけた。
「もうじき結婚式が始まるだぁ。参列するなら早く中に入ったらどうだぁ。」
「あ、いえ…。」
 その女性は遠慮がちに言った。
「関係ねえなら、どっかにいってくんねえかぁ。邪魔だぁ。」
「その…。」
 女性は自分でもどうすればいいのかわからない様子であった。
「やれやれ、院長先生がお供についてこいっていうから来たけど、こんな時でも、どうして、あっしは、こんなややこしい用をさせられるだぁ?」
 男はうんざりしたようにつぶやいた。
 この様子をじっと見ていた二人は、それぞれに何かを考えた。
「兄貴…、おれ、あの男の人を知ってる。救貧院でおれとシャルロットが会えるようにしてくれた人なんだ。」
「つまり、君の味方ってわけか?」
「そうなんだけど…。でも、おれとしてはあの人を危ないことに巻き込みたくはないんだ。」
「いや、実に好都合だ。別に彼を危ない目に合わすことはない。君は彼に頼み込んで中に入れてもらえ。とりあえず、それだけでいい。ぼくは、あの女性の方と話をつけるとしよう。」
「話って?」
「ぼくの直感が外れていなければ、彼女も又、ぼくたちと思いを同じくする者にちがいない。」
 ディマンシュの目が輝いた。
「いいか、人々の耳目が花嫁から別の事柄に集中する時が必ずやってくる。その時をのがさず、シャルロットを外に連れ出すんだ。そうだ。こいつにも協力してもらうとするか。」
 ディマンシュはアルの連れてるロバの頭をなでた。

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