第20話 結婚式-1

これまでのあらすじ
 1685年、フランスの絶対君主ルイ十四世は、信教の自由を定めたナントの勅令を廃止し、カトリック以外の宗教を禁じた。これまで共存していたユグノー(プロテスタント)とカトリックの人々との間には、深い対立が生じることになった。
 カトリックの貴族の少女シャルロットは、ユグノーの少年アルと心を通わせ、駆け落ちを決意するまでに至るが、その駆け落ちの前日、かねてからシャルロットに求婚していたダンドリオン伯爵がやってきた。その会食の場で、兄のアドルフが戦争に備えて国内の隠れユグノーを徹底的に摘発する任務を帯びてることを知って、アドルフとアルとがやがて血で血を洗う事態に陥るのではないかと考え、ひどく悩む。その彼女の苦悩につけ込み、ダンドリオン伯爵は自分の地位を利用して国王にナントの復活を進言するかわりに結婚を承諾せよと迫る。シャルロットはついそれに応じてしまう。
 そんな事情を知らず、シャルロットがダンドリオン伯爵と結婚することだけを知らされたアルは絶望に打ちひしがれる。そんな気持ちを書きなぐった手紙を、アルはジュネーヴ学院で勉学に勤しんでいる従兄のディマンシュのところに送る。


 ジュネーヴ学院は静かであった。祭りを終えた学生たちは、試験の準備に没頭していた。学生寮は静まり返っていたが、ある部屋の戸をたたく者がいた。
「おかしいなあ。留守かなあ。」
 もう一度、今度はかなり強くたたくと、別の部屋から学生が顔を出し、苛立った叫び声をあげた。
「うるさい! 何やってるんだ! 静かにしろ! 人の勉強の邪魔をするんじゃない!」
 戸をたたいていたのはポワーヴルで、叫び声をあげたのはグランデであった。
「グランデ君、君の声の方がうるさくないか。」
「何を言うんだ。もうじき試験だっていうのに、君はのんきだな。」
 ポワーヴルはグランデの言い方がしゃくにさわったが、気にしないように努めた。
「ぼくだって、ちゃんと勉強しようと思っているんだ。だから、こうしてブライユ君にわからない所を聞こうと思って来たんだ。」
「あいつに?」
 グランデは少し面白くなかった。しかし、自分がポワーヴルの相手をしてやろうという気もなかった。やっかいなことは人に押しつけるに限ると思って、グランデは言った。
「あいつなら、ガトー先生に呼ばれて出かけていったぜ。」
「ありがとう。」
 ポワーヴルは、学生寮を出ようとした。すると、そこへちょうど郵便の荷が来るのに出くわした。
「そうだ。ブライユ君への手紙が来ていたら、持っていってやろう。」
 ポワーヴルは、その手紙の束の中に、まさに目的の手紙を発見したのだった。

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この記事へのコメント

表裏
2007年08月02日 11:45
アル君からの手紙を受け取るディマンシュ君は、どう思うのでしょうか。ドキドキ
2007年08月03日 11:09
表裏さん、お久しぶりです。ずっと見てくださっていたのですね。コメントありがとうございます。
ジュネーヴ学院では、学生たちはみな試験準備に忙しそうです。さて、どうなることでしょう。

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