第5話 シェイクスピア的悲劇―1

これまでのあらすじ
 カトリックに改宗した母親を嫌ってボルドーから家出してきたディマンシュは、信仰を捨てずにいた伯父オーギュストを尋ねてセヴェンヌまでやってきたが、彼はすでに亡くなっていた。
 ディマンシュは、伯父が翻訳と出版を行なおうとしていた『自由の法』の手がかりがつかめるのではないかと思い、修道士に変装して、従弟のアルと共にカトリックの教会の書庫にもぐりこむ。
 二人はそこで読書好きのカトリックの貴族の少女シャルロットと出会う。アルは彼女に一目ぼれしてしまうが、彼女はディマンシュに憧憬を抱いている。三人の思いが交差する中、二人はシャルロットに誘われるまま、ルール家のお茶会に出席することになる。

 日曜日の午後がやってきた。ルール氏の屋敷を一人の修道士と見習の少年が訪れた。

 ルール氏は、隠遁を好んでいるわけではなく、本来は社交的な性格であった。しかし、娘と息子を除くと、彼は話し相手になる人物にはひどく事欠いていた。他の貴族の多くは、ルール氏が変わり者であるという噂を信じて近寄るのを避けていた。ルール氏の方も、貴族とは名ばかりの教養のない連中とあえて付き合おうとはしなかった。したがって、この日は、久しぶりに自分と話の合いそうな青年を迎えて、ルール氏はご機嫌であった。

 ルール氏は彼らの来訪の知らせを聞くと、聖職者に対しては身分や年齢の上下に関わりなく敬意を表すべきだと述べ、自ら玄関まで出向いた。しかし、敬意というよりもむしろ一刻も早く新しい客と会って話がしたいという好奇心の現われであったかもしれない。

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