慧眼なる読者との対話(1)

 ここまでこの小説を読んでくださった皆様、ありがとうございました。
 このように一つの話を20~30日ぐらいで、ほぼ毎日公開していくつもりですので、今後ともよろしくお願いいたします。

 おや? どなたかお客様がいらしたようです。

「やれやれ、本気でこんな小説を書こうとしているのかね。」
「ご意見を承りましょう。」
「そもそもなぜ三百年前のフランス? もっと身近な題材がいくらでもあるだろうに。」
「今の私にとってはこれが最も身近な題材なのです。」
「感覚が古すぎるね。黴の生えたBildungsromanなどもう誰も読まないよ。」
「いや、むしろroman-fleuveのつもりですが…。あっ、ちょっと待ってください。この小説は日本の読者に読まれることを想定しているので、なるべく外国語は使わないようにしてくださいね。えー、ロマン・フルーヴとは、大河小説という意味です。」
「わしにそんな説明をしなくともわかっておる。Bil...いちいち面倒くさいな、教養小説だろうと大河小説だろうと同じことだ。忙しい現代人にはそういう悠長な小説を読んでいる暇はない。」
「たしかにねえ…。例えば、トルストイの『戦争と平和』なども、よく知られている割には読まれていないですよね。せいぜい、映画で見たことがあるというくらいですか。でも、はっきり言って、映画よりも小説の方がはるかに味わい深くて面白いですよ。私などは抱腹絶倒してしまいましたね。」
「『戦争と平和』を読んで?」
「ええ、もちろんですよ。私もああいう小説が書ければいいなあと思っています。」
「またずいぶん大きく出たものだ。」
「はったりが過ぎましたかね。」
「そもそも、君はどの程度フランス語ができるというのかね。フランスを舞台にした小説を書こうというのだから、さぞかし堪能なのだろうな。日本語の文献だけを調べても本当のことは書けないぞ。」
「はあ…、痛いところをついてきましたね。しかし、不手際があれば、ご専門の方々から指摘していただこうというのが、こうして未完成の作品を公開する理由のひとつでもあります。でも一応は現地取材までしてきたんですけれど。」
「それはいい心がけだ。」
「ようやくお褒めにあずかり、ありがとうございます。」
「いやなに。そういう努力をした上で過ちを犯すというのなら、まだ見込みがあるというものだ。人間は努力する限り迷うものだからな。」
「『ファウスト』ですね。」
「わかるかね。」
「わかりますとも。」

 いやはや、慧眼にして気難しい読者のお相手をするのはたいへんです。しかし、作者としては、読者からのどんなご意見・ご質問にも丁寧に対応するつもりでいます。
 皆様、どうぞ忌憚のないご意見、ご感想をお寄せください。

 それでは、明日からの連載再開をお楽しみください。
 第二話では、ディマンシュの“弱み”が明らかになるかも…?

第一話に関する覚書

1690年12月24日~25日
場所
南フランスのセヴェンヌの山村、ブライユ家の居間

登場人物
ディマンシュ・ブライユ(1671- )…主人公
オーギュスト(1635-1688)…ディマンシュの伯父
ガブリエル(1660- )…オーギュストの妻
アルベール(1678- )…ガブリエルの息子
ミレイユ(1638- )…ディマンシュの母

戦争と平和〈1〉

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この記事へのコメント

表裏
2006年02月20日 16:56
いつも楽しく読ませていただき、まことにありがとうございます。いそがしながらも読ませていただいています。最近見ていませんでしたが、新しくコメントしてくれている人がいたので、ちょっとうれしいです。これからも読み、そしてコメントしていきますのでよろしくお願いします。
2006年02月20日 21:44
表裏さんは忙しいのに、この小説を読んでくださっているんですね。ありがとうございます。どうぞご自分のペースで読んでいってください。表裏さんのコメントは、とても素直な性格が現れており、楽しみにしています。どうぞこれからもよろしくお願いいたします。

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