第30話 荒野の説教者-2
<<
作成日時 : 2008/05/02 11:36
>>
トラックバック 0 / コメント 0
それは彼の手紙にしてはめずらしく興奮した調子で書かれていた。
「アル、君にこれまでで最も喜びに満ちた便りを書くことができそうだ。といってもまだはっきりと決まったわけではないので、ぬか喜びは禁物だ。しかし、万が一それが実現しないということになっても、今この瞬間、ぼくの心がとてつもなく歓喜に弾んでおり、君にこんな手紙を書かずにはいられないということを知ってほしい。詳細を書くわけにはいかないが、現在ある事業について要員の募集がなされている。ぼくはその事業に志願することにした。自分で言うのもなんだが、ぼく以上にこの事業に適任な人間はいないと自負している。二年ぶりに君に会うことができそうだ。その日が来るのを心待ちにしている。D・B」
アルは、ディマンシュがわざと曖昧に書いている「事業」とは何のことであるか、すぐに思い当たった。
「おれたちの計画はうまくジュネーヴに届いているんだ! そしてディマンシュがジュネーヴから派遣されてくるんだ!」
アルもまたディマンシュがこの知らせを送ってきたのと同じ心はずむ思いを味わった。以前にもこうなるのではないかと考えたことはあったが、それは憶測であり、願望に過ぎなかった。しかし、こうしてディマンシュの手紙にそのことが書かれると、俄然、現実味を帯びてくるのだった。
|