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help リーダーに追加 RSS 第30話 荒野の説教者-14

<<   作成日時 : 2008/05/14 09:24   >>

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「単に机から落ちただけのことだ。」
 ディマンシュは冷たくそういうと、ポワーヴルに背を向け、机に向かった。その背中からポワーヴルはのぞき込んだ。
「なになに…、『ナントの勅令の意義と限界およびその廃止がもたらす諸結果』…。また難しいものを書いていたんだね。それにしても、こういったものを、いつも製本したかのようにきっちりとまとめておく君にしては、どうしてこんなにしわくちゃになっているんだろうね。散らばっていたのをあわててかき集めでもしたように。」
「いいかげんにしろ!」
 ディマンシュは思わずかんしゃくを破裂させた。
「君はどうしてぼくの癪に障ることばかり言うんだ!」
「君のことが心配だからだよ。」
「心配? 何が!」
「このままじゃ、君は病気になるぜ。」
「また何を言い出すかと思ったら…。」
「いや、これを冗談だとは思わないでくれ。」
 ポワーヴルはいつになく真面目な表情でディマンシュをじっとみつめた。
「君は周囲からは理性の塊のような人物だと思われているが、ぼくはそうじゃないと思っている。君はむしろ溢れんばかりの情に満ちた人間だ。その情を溢れさせないために君は理性を発達させてきた。そうじゃないか。」
「さあ、どうだか。」
 ディマンシュは曖昧な返事をした。

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コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
「溢れんばかりの情を溢れさせないために理性を発達させてきた」というのは、なるほど、と思いました。ボワーブル君の観察眼と人物評価力は、たいしたものですね。
ヒッピー
2008/05/14 09:42
大河ドラマ『篤姫』で、尚五郎は当然自分が江戸へ行かれると思ったら、殿が選んだのは西郷。尚五郎が凄いショックでしたね。しかも西郷は親友だから、引きつった笑顔で「おめでとう」。きつい。
人生でありがちな場面です。
沢里尊
2008/05/14 20:39
ヒッピーさん、ポワーヴル君は、ガトー師の見立て通り、優れた人物なのです。
すずな
2008/05/15 00:28
沢里さん、なるほど。まったく同じシチュエーションですね。ポワーヴル君はセヴェンヌで説教者として活躍し、ディマンシュはまだもうしばらくジュネーヴで髀肉の嘆をかこつ毎日を送ってもらうことになります。
すずな
2008/05/15 00:37
言っておきますけど、ぼくは脚に贅肉などついていませんから。
ディマンシュ
2008/05/15 00:50

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