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ポワーヴルはひとしきり任務の心構えや注意事項を聞かせられると、自分の部屋に戻り、出立のための準備をあれこれとし始めた。それからディマンシュの部屋を訪れた。彼は、いつものようにディマンシュの部屋の戸を断りもなく開けようとしたが、この時ばかりは何か思うところがあったのか、軽く戸をたたいた。数秒の沈黙の後、中から入るようにとの声がした。 「やあ、ブライユ君、今日は君にぜひとも聞いてもらいたいことがあってね。」 ポワーヴルはいつもと変わりない屈託のない笑顔でこう言った。 「ぼくがフランス行きに決まったよ。」 ディマンシュもまたいつもと変わらぬ様子でそれに答えた。 「知っている。おめでとう。君ならこの大任を果たせるだろう。」 「やれやれ、君が冷静な人間であるのはよくわかっているけどね。あまり本心を取り繕うことばかりやってると、身体に悪いぜ。」 「何を取り繕うというのだ。」 「ぼくが君ならね、きっとこう叫んでいるよ。…畜生! なぜだ? このぼくがポワーヴルなんかに遅れをとるとは信じられん。先生方はいったいどこを見ているんだ! とね。」 「馬鹿馬鹿しい。また君の妄想が始まった。」 「妄想なんかじゃない。ほら、その証拠に、君がいつも後生大事に机の上に飾っているこの鳥の置き物、これがなんだって、部屋のすみにころがっているんだい。君の憤懣(ふんまん)のとばっちりを食ったんじゃないのかい。」 ポワーヴルは床に落ちていた鳥の置き物を拾ってほこりを払うと、ディマンシュに渡した。 |
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