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「ロラン、これを食えよ。みんなもどうだい。」 空腹だったのはロランだけではなかったので、袋はあっという間に空っぽになった。 「アル…、これ、デュプランさんの店のお菓子だよね。」 ジャンが恐る恐る言った。 「へえ〜。あのパン屋、性格は悪いが腕前はたいしたもんだ。」 マゼルが最後のひとかけらをほおばりながら言った。 「うん、うん。」 ロランもマゼルに同意した。彼も菓子で口をいっぱいにしていたので、うなずくことでその意を表現した。 しかし、ジャンは心配そうに言った。 「これ、たしか、よそで売ってくるって言って預かってきたんじゃなかったんだっけ。デュプランさんに怒られるよ。」 「しかたないよ。みんな腹ペコだったんだから。デュプランさんには、おれの方から謝っておくよ。」 「でも、それじゃ…。」 「おれはやっぱり商売人には向かないよ。」 アルは苦笑いをして言った。 アルがデュプランの店に空っぽになった袋と空っぽのままの財布をもって侘びに行った時、はたしてデュプラン氏はといえば、ぶつぶつと文句を言いながらも実際に弁償まで求めることはなかった。彼はこの青年を完全には信用していなかったので、最悪の場合を見越して損害が最小限に留まるよう、形が崩れていたり割れていたりして売り物にならないものばかりを渡していたのだった。 (第29話 終わり) |
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