陽気な日曜日

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help リーダーに追加 RSS 慧眼なる読者との対話(25)

<<   作成日時 : 2007/11/28 10:35   >>

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 皆様、以上で『陽気な日曜日』第二部は終了です。第一部の連載開始からもう二年になります。長らくご愛読いただきましてありがとうございました。
 
「まるで長期の休載をするかのような挨拶だな。もしかして、もう行き詰ったとかいうのではないだろうな。」

「行き詰ったわけではないのですが、実は第二部が終わった後、小説の掲載をしばらく休む予定にはしていたのです。しかしながら、諸般の事情により、12月1日から第三部を開始することにいたしました。」

「諸般の事情とは?」

「それは明日、明らかにいたしますので、もう少しお待ちを。」

「またまたもったいぶって…。もしかして、今回の対話はこれで終わりなのか。」

「終わりにしてもいいんですけど。」

「手抜きだな。」

「それじゃあ、シャルロットの妊娠と出産を祝って、妊娠基礎講座といきましょうか。」

「女性の読者しか読まないだろうな。」

「いえ、ここは男性の読者にもぜひ読んでいただきたいところです。よく妊娠2ヶ月とか3ヶ月とかいう言葉を聞くと思いますが、1月1日に受胎した場合、いつから妊娠2ヶ月になると思われますか?」

「2月1日からではないのか?」

「それはまったくの間違いです。ハネムーンベビーの場合、夫がそういう認識をしていると、夫婦不和の原因にもなりかねません。まず、妊娠期間を示す場合は、4週間を1ヶ月とします。これだけでも、通常の暦よりも短いですね。さらに、妊娠期間の始まりは、受胎時ではなく、最終月経から数え始めます。だから、たとえば、最終月経日が12月18日で、正確に28日おきに月経のある人の場合は、1月1日に排卵があったと推定され、1月15日から妊娠2ヶ月と数えられます。ちなみに出産予定日は9月24日です。」

「では、十月十日(とつきとおか)とは、いったい何のことだね?」

「最終月経日が1月1日なら、出産予定日は10月8日になります。ほぼぴったりですね。妊娠期間とは、受胎日ではなく、あくまで最終月経日から数えることになっているのです。」

「どうしてそんなややこしいことを…。」

「なぜかといえば、受胎したのがいつなのかを正確に知ることは難しいのですが、月経なら明白にわかるからです。そして、次の月経予定日の2週間前に排卵が起こると推定して計算がなされます。ただ、月経周期が完璧に正確な女性というのはそれほど多くはありません。たいていの女性は数日のずれは普通で、環境の変化や肉体的・精神的な不調によって数週間のずれがあることも珍しくありません。特に、排卵が始まったばかりの若い女性は月経周期が定まらない場合も多く、何ヶ月も無月経の場合もあります。そういう場合は正確な月数を定めることは非常に難しくなってきます。」

「ふうむ、では、排卵が予定よりも2週間遅れた場合は、もしかして受胎した日がすでに2ヶ月目になるということなのか?」

「なんてご理解が早いのでしょう。その通りです。したがって、身体の不調を感じて受診した時には、受胎から1ヶ月しか経過してなくても、妊娠3ヶ月と言われてしまいます。無知な男性だと、ここで『俺の子じゃない!』などと口走ってしまいそうですね。男性も女性の身体のことを知っておく必要があることがよくおわかりでしょう。」

「この小説に描かれた時代においても、そういう計算がなされていたのかね?」

「この時代は経験的にごくおおざっぱな計算はあったかもしれませんが、妊娠や出産に関する科学的な研究は皆無といってもいい状態でした。月経と排卵の関係を初めて明らかにしたのは荻野久作博士でした。はじめ日本で発表したところ、当時の医学界からはまったく相手にされず、ドイツに渡り、数年後1930年に発表してようやく世界中にその意義が認められることになりました。」

「20世紀とは!」

「こういう分野に関する研究は、ずいぶん軽んじられてきたのだと思います。荻野博士の研究成果にしても、不妊治療を目的とした荻野博士の意図とは逆に、避妊法として広まってしまいました。いわゆる“オギノ式”といわれるものですが、荻野博士自身は、前の月経から次の排卵期を算出する方法による避妊はまったく不確かなものであって、望まない妊娠と中絶を増やすだけであると強く反対していました。」

 …とまあ、またまたこの小説とはまったく関係ない話になってしまいましたが、12月1日からの第三部もどうぞよろしくお願いいたします。

第23話に関する覚書

1694年秋〜1695年8月1日
場所
ブライユの家
ジュネーヴ学院
ルール氏の屋敷
パリ近郊の司祭館

登場人物
アルベール・ブライユ…ユグノーの青年。愛する新妻シャルロットを彼女の父親に奪い返され、結婚を認めるための厳しい条件を突きつけられる。
シャルロット・ド・ルール…アルベールと結婚したが無理やり連れ戻される。しかし、彼の子アントワーヌを出産する。
セザール・ド・ルール…元ユグノーであったカトリックの貴族。娘のシャルロットを連れ戻すことに成功するが、彼女の妊娠・出産は想定外であった。
ガブリエル・ブライユ…アルベールの母親。嫁のシャルロットを実の娘のように可愛がる。
ディマンシュ・ブライユ…ユグノーの青年。アルベールの従兄。現在はスイスのジュネーヴ学院で勉学中。アルとシャルロットを結婚させることに尽力したが、彼らが引き離されたことは知らず、アルの要望に応えてラテン語の指導を行なう。
リュック…かつてルール氏の父親アントワーヌに仕えていたが、隠れユグノーの村の長老となる。床屋兼外科医。シャルロットの侍医となる。
リザベット…リュックの妻。腕利きの産婆でもある。
執事、馬丁、園丁、料理番…ルール氏の屋敷の使用人
アントワーヌ…シャルロットとアルベールの間に生まれた息子。
フランソワ・ド・リヴェール…元ガレー船の副官、ブルターニュの治安担当責任者。現在は司祭。アルベールの父親オーギュスト・ブライユと浅からぬ因縁がある。

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