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「第14話 スザンナ」を呼んでいただいた皆様ありがとうございます。ここは歴史的事件とはあまり関係のない場面なので、息抜きとして気軽に読んでいただけたのではないかと思っております。 「なんともはや下品な場面の連続であったな。」 「そう言われるんじゃないかと思ってましたよ。あ、ところで、最後にディマンシュが口にした品のない言葉は、フランス語では何と言うかお分かりでした?」 「もちろんだとも。“Merde!”と言わせているつもりなのであろう。英語で言えば“Shit!”にあたる。この言葉はあまりにも下品なので、そのまま書くことをはばかって“m....”とか“cinq lettres(5文字)”とか書くこともあるくらいなのだ。」 「そういう伏字にするとかえって下品な感じが増しますね。しかし、固形の排泄物を表す言葉が罵りや怒りや失望を表す言葉にもなるというのは、全世界共通なんですかね。」 「そういう話にはのらんぞ。学問の装いをまといつつも話を下品な方向に持っていこうとするのが目に見えておる。」 「やだなあ。考えすぎですよ。フランス語と日本語の違いと共通点を真面目に考察したいと思っているだけですよ。では、『ざっくばらんな口をきく』とはどんなフランス語かわかります?」 「ふむ、これも簡単だ。“tutoyer”すなわち、相手のことを“tu”を使って話すということだ。フランス語では二人称に二種類あって、一般には“vous”が使用されるが、“tu”は打ち解けた関係、つまり家族や恋人、親しい友人の間で使われるのだ。“ 「この小説では、そういう区別を、むしろ一人称の変化によって表現しています。ディマンシュが自分のことを『私』と言っているところでは、相手を“vous”で呼んでおり、『ぼく』と言っているところでは相手を“tu”で呼んでいるという設定になっています。」 「“tu”と“vous”ではその後に続く動詞の形も異なるので、命令形にした場合に、相手を“tu”で呼んでいるのか“vous”で呼んでいるのかの区別も付くというわけだ。つまり『出て行け!』と怒鳴った時、彼は“tutoyer”を使ってその言葉を言ったことになる。」 「英語では人称による動詞の変化といえばbe動詞のam,is,areや一般動詞の三単現のsぐらいですけれど、フランス語は山ほど覚えなければならないのがやっかいですよね。日本語の動詞にはそういう区別はありませんが、一人称、二人称とも数多くの言い方があるのが日本語を学ばれる方にとってはきっとやっかいなんでしょうね。」 「日本語の難しさはそれだけではないぞ。『万葉集』や『源氏物語』をフランス語に翻訳したルネ・シフェールは、日本語のことを『およそ人間が思いつきうる表記法のうちでもっともこみいった悪魔的なシステムである』と言ったそうだ。」 「『万葉集』や『源氏物語』なら、私もそう思いますね。」 「なさけない!」 3月1日からは「第15話 手紙」の開始です。そろそろ場面をもう一度フランスに戻さなければなりません。フランスに残された人々はどのように日々を過ごしていることでしょうか。懐かしい人々が再登場するとともに、新しい登場人物も顔を出します。またすでに顔見知りの人物の意外な側面が明らかになるかもしれません。どうぞお楽しみに。 第14話に関する覚書 |
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