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「あしたはノエルだねえ。アル、何かほしいものはないのかい?」 夕食後の一仕事に、繕いものをしながら、母親のガブリエルが声をかけた。 「母ちゃん、無理しなくったっていいんだよ。」 アルは、手慰みに、木の切れ端を小刀で彫りながら答えた。 「何だよ、わかったようなこと言って。」 「母ちゃん、おれはもう母ちゃんより背が高くなったんだよ。」 アルは立ち上がって母親のそばに行った。ガブリエルも立ち上がった。すると、息子の目を見つめるためには、視線をごくわずかだが上に向けなければならないことに気付いた。 「あれま、本当だ。いつの間に…。」 「だから、もう子どもじゃないんだから、わざわざおれのためのノエルの贈り物なんか、母ちゃんが用意しなくったっていいんだよ。」 「まあ、生意気な口をきくようになったもんだ。」 母の背を越したとはいえ、声はまだ、子どもっぽいかん高さを残していた。ガブリエルは、たった今確かめてみたにもかかわらず、息子が自分の背を越したことが、まだ信じられなかった。 「母ちゃんこそ、なんかほしいものはないのかい。」と、今度はアルの方から聞いてきた。 「さあねえ。」 「母ちゃんもまだ若いんだから、ちっとはおしゃれしたらどうなんだい。」 「別におしゃれなんかしなくても、父ちゃんはあたしのこと愛してくれたよ。」 ガブリエルはいわゆる美女というにはほど遠く、どちらかといえば男っぽい顔立ちをしていた。その太い眉と少し釣り上がった大きな目は、出会う人に凛々しい印象を与えた。鼻は低くて上を向いており、口はよく動く筋肉に囲まれていた。薄茶色の髪を無造作に束ねた彼女が男の服を着ると、誰もが小柄な男性と間違えた。彼女は少女の頃、ひとつには貧乏から、そしてもうひとつは若くして死んだ兄のことを忘れないために、彼の服を着ていた時期があった。 彼女の夫となったオーギュストは、初めて出会った時はもちろんのこと、それから半年以上もの間ずっと彼女のことを男の子だと思い込んでいた。彼女が胸の開いた女物の衣装を着てきた時には、このめったなことではうろたえない男がすっかり仰天したくらいであった。 そして、三十歳になった今でも、そういう少年性は、彼女から消えることはなかった。 「へへっ、今でも、母ちゃんは父ちゃんにぞっこんだね。」 「悪いかい。」 「いいかげん、新しい人を見つけてもいいんじゃない。」 アルはこの問いに母が何と答えるかは十分わかっていた。 「そうだねえ…。ま、父ちゃん以上の男がいればの話だけどね。あんな男はめったにいないよ…。」 ガブリエルは、遠い目をしながら、死んだオーギュストのことを思い出していた。こんなときの母には何を話しかけても無駄だということを、アルはよく知っていた。 アルは自分の部屋に戻って、寝台の上で祈った。 「神様、もしもノエルの贈り物をもらえるんだったら、一日でいいから父ちゃんに天国から戻ってきてほしいって、お願いしたいな…。」 |
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アル君、やっぱりお父さんがいなくて寂しいんだね。本当にお父さんが帰ってきたりするのかな?(ありえないかな?) |
表裏 2006/01/16 23:40 |
さあ、どうでしょうね…。 |
すずな 2006/01/17 13:30 |
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